矢本悠馬”旧友”の登場が熱すぎる…他の競技とは違う「競技かるた」の特異性とは?『ちはやふる-めぐり-』第3話考察&感想【ネタバレ】
當真あみが主演を務める7月期水曜ドラマ『ちはやふる-めぐり-』。本作は、競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を熱く描いた、映画シリーズから10年後、バトンを受け継いだ令和の高校生たちの青春を描くオリジナルストーリーだ。今回は、第3話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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かつての仲間(矢本悠馬)が立ちふさがる
『ちはやふる』の原作11巻で記憶に残っているシーンがある。瑞沢高校競技かるた部の顧問・宮内先生が千早たちの試合を観戦しながら、競技かるたの特異性に思いを巡らせるシーンだ。
「知れば知るほど不思議だわ、競技かるたって。男女の別なく、体格の別なく年齢の別なく、知性と体力の別なく、詠まれた瞬間、千年前とつながる。そんな競技、いくつもない」
『ちはやふる-めぐり-』第3話は、そんな競技かるたの魅力が詰まった回だった。
めぐる(當真あみ)が退部を撤廃し、梅園高校競技かるた部の部員は5人に。それにより団体戦に出場が可能となり、部員たちは全国大会に向けて腕を磨くため、地域のかるた会「府中夕霧会」の門を叩く。
そこで巡り会うのが、瑞沢高校OBの“肉まんくん”こと西田優征(矢本悠馬)だ。
入門の条件は会長である西田を相手に札を3枚取ること。めぐるは千江莉(嵐莉菜)と2人1組で挑むが、もともと新(新田真剣佑)に匹敵するほどの実力者で、努力の末に今や全国トップレベルの選手となった西田には一切歯が立たない。
加えて初心者の高校生が相手だろうと容赦しない西田の高度なテクニックにより、2人は惨敗。奏率いるかるた部に、かつての仲間が立ちはだかる展開はまるで少年漫画のようである。
その日からめぐると千江莉の苦手を克服するための特訓が始まった。
千江莉(嵐莉菜)が野球部を辞めた理由
改めてだが、競技かるたは文化系の側面と体育会系の側面を兼ね備える競技だ。百人一首を暗記するのはもちろん、札の配置を覚える記憶力、上の句が読まれた瞬間に札を払う瞬発力、長時間にわたって集中を維持するための精神力と体力など、さまざまな力が求められる。
めぐるの場合は体力づくりと体幹を鍛えることが急務だった。一方の千江莉はまず歌を覚えるところからやり直し。語呂合わせや年代順に振り分けられた歌番号の活用など、覚え方は色々とあるが、古典を愛する奏としては歌の背景も理解してほしいところ。
そんな奏による藤原道雅の歌<いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな>の解説を聞き、千江莉の目から涙が溢れる。
藤原道雅は藤原伊周の長男(藤原道長の甥にあたる)で、三条天皇の娘・当子内親王とは恋仲にあった。しかし、藤原道長に譲位を強いられた三条天皇は激怒し、2人の仲を引き裂いてしまう。
<いまはただ>は当子内親王に会えなくなった藤原道雅の「私は泣く泣くあなたを諦めることにします。この無念をあなたに直接お伝えできたなら、どんなにいいだろう」という切ない心情が込められた歌だ。
千江莉にも幼馴染の優樹(山崎雄大)に伝えたくても伝えられない思いがあった。リトルリーグ時代からバッテリーで、一緒に甲子園に行くことを夢見ていた2人。
けれど、性別による体力差や男女が同じフィールドに立てない高校野球のルールが2人の夢を阻む。それでも優樹は他の人とバッテリーを組もうとせず、千江莉は泣く泣く野球から身を引いたのだ。
百人一首は千年経っても変わらぬ思いを紡いでいる。背景は違っても、大切な人に自分の気持ちを伝えられない切なさもまた普遍的。奏の解説で歌の意味を知った時、千江莉は千年前とつながったのだ。
勝負の鍵を握った友札
千江莉が競技かるたに興味を持ったのは、草太(山時聡真)と凪(原菜乃華)の試合を見たから。男女が同じフィールドで戦えるだけではなく、凪は草太に勝った。
その光景に千江莉は新たな希望を見出したのだろう。そんな千江莉の思いを受けて、めぐるの中にも闘志が芽生えたように見えた。
そしてめぐると千江莉は猛特訓を重ね、2人だからこそできる作戦で再び西田に挑む。なかでも勝負の鍵を握ったのは友札だ。
友札とは、途中まで決まり字が同じ札のこと。千江莉の得意札<むらさめの>とめぐるの得意札<めぐりあひて>は厳密に言うと友札ではないが、どちらも最初の文字の子音が共通しているため、それぞれの札を二手に分かれて取りに行くことに。
その結果、めぐるは敵陣の<むらさめの>を西田が反応する前に払うことができた。さらには西田の囲い手(決まり字が長い大山札などを相手に取られないように手で囲っておくこと)を崩す作戦も成功。ついに3枚の札を取ることができためぐると千江莉の間には友情が芽生える。
もし競技かるたに出会っていなかったら、めぐると千江莉は言葉を交わすことさえなかったかもしれない。男女の別も、体格の別も、年齢の別も、知性と体力の別もない。
つまりは、思いもよらぬ出会いに巡り会えるということ。めぐると千江莉は競技かるたがあったからこそ、<むらさめの>と<めぐりあひて>のような“友札”になることができた。
一方、西田のかるた会で憧れの専任読手・中西泉(富田靖子)と巡り会った奏。かるたで宝物を見つけられた人は、その10年先で絶対に明るい未来が待ってる――そのエビデンスをめぐるに示そうとする奏の新たな青春もまた始まろうとしている。
【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
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