2人ともコミュニケーションが極端すぎ…佐野勇斗”那須田”の瞳から感じたことは?『ひとりでしにたい』第5話考察&感想【ネタバレ】
綾瀬はるか主演のNHKドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜よる10時放送)。本作は、愛猫と暮らす独身女性の主人公・鳴海が、幼少期より憧れの存在だった独身の叔母の孤独死をきっかけに、自身の終活について考える物語。今回は、第5話のレビューをお届けする。(文・菜本かな)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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かつての「自分の舐め」は、いつか自分に返ってくる…。
まずは、前回のコラムで罵ってしまった鳴海(綾瀬はるか)の元カレ・健太郎(満島真之介)に、全力で謝罪をしたい。
だって、あの時の健太郎は、「結婚に焦った元カノが、今さらワンチャン賭けて連絡取ってきたからおちょくってやるか〜」みたいに舐めた態度を取っていたから…。しかし、その態度を取った理由を聞くと「まぁ、仕方ないかな」と思えてしまった。
鳴海と付き合っていた時、健太郎は自分の存在を“時間の無駄”扱いされていたように感じていたらしい。一緒に時間を過ごしていても、鳴海はいつも「ほかにやることたくさんあるんだけど?」みたいな顔をしている。
こんな彼女と付き合っていたら、自己肯定感はダダ下がりだ。だから、「そんな女が今さら擦り寄ってきたら、ちょっとは笑ってやりたくもなるだろ?」というのが、健太郎の本音だったのだ。
鳴海の悪気ない態度は、思っている以上に他者を傷つけることがある。それを、過去の健太郎は黙って耐えてきた。
つまり、健太郎のあの舐めた態度は仕返しでもあり、鳴海に自身の無自覚な残酷さを突きつける“鏡”のような行為でもあったのだ。正直、「15年前のことをそんなに引きずるか?」と思う部分はあるが、彼のなかでは大きな傷になっていたのだろう。
その気持ちも分からなくはないけれど、「俺は結婚してるけどなっ!」と勝ち誇ったように言った健太郎の顔は、やっぱりウザかったです。
「ひとりで生きる」ためには「他人」が不可欠
「ひとりで生きて、ひとりで死んでいく!」と決意した鳴海。つまり、それは結婚をせず、家族を持たない選択をしたということ。もちろん、家族を持ったからといって、人生がイージーモードになるわけじゃない。
しかし、他者との関わりがそこまで得意ではない鳴海にとって、他人との関係だけで生き延びなければならない人生は、かなりハードモードだ。健太郎と交際していた時のような雑な意識のままではやっていけない。
わたしは、考えすぎてしまう方なので、「なんとかなるっしょ」精神で生きている鳴海のことを、「生きるのがうまい人だな」と思う瞬間がある。ただ、他者が関わると、そうシンプルにはいかないことも…。
たとえば、那須田(佐野勇斗)と仲良くしていたら、「結婚に焦った女が、恐れ多くも一回り以上年下のエリート男子に付き纏ってる」と思われるのでは? と不安になった鳴海は、「話しかけんじゃねぇ〜!」と那須田をシャットダウンした。さっきまで仲良くしていた人に、急に拒絶される側の気持ちを、鳴海は考えることができない。
那須田に無視されるようになって、ようやく「なんで急に冷たくなったんだろう?」と彼の気持ちを考えられるようになったものの、「いやいや、理由はひとつしかないやろがい!」とツッコミを入れたくなる。
那須田からしたら、「話しかけんじゃねぇ〜!」と言ってきたくせに、「お前から話しかけてくるんかいっ!」という感じだろう。鳴海が悪気なく人を不快にさせるのは、「無知と想像力の欠如が原因」だと那須田は言っていた。
さすが、鳴海のことを凝視しているだけあって、“まさに”な分析だ。
正しいコミュニケーションが分からない那須田(佐野勇斗)
また、那須田も那須田でコミュニケーションに難を抱えている。どうやら、彼は毒親から虐待を受けてきたようだ。相手にいきなりでかい傷をつけて、そこに無理やり入り込んで居座る…というのが、那須田が子どもの頃に親に教え込まれたコミュニケーション方法。
だから、鳴海に対してもあえて地雷を踏んで傷つけまくっていたらしい。しかし、「それじゃいけない!」と気づいた那須田は、趣味を合わせたり、知っていることを教えてあげたりと、真っ当に仲良くなれるための努力をした。
それなのに、急な拒絶…。「結局、取り繕ってみても山口さんみたいな普通の家の子には、俺が変な家の子だってバレちゃうのか」と心を閉ざしてしまった。
自らの生い立ちを語る時の那須田の表情は、ある意味“サイコパス”のようだった。片方の口角だけを上げて、感情を押し殺したような笑みを浮かべる。
でも、なぜか彼の顔を見て恐怖を感じない自分がいた。その理由についてじっくり考えてみた結果、瞳の奥の輝きが消えていないからだ…ということに気がついた。
あえてかは分からないが、佐野勇斗は冷たい言葉を吐いている時も、瞳の奥にわずかな温度を残している。完全に心を閉ざした人間の無機質さとは違い、鳴海への“愛”を感じることができた。
次週は、いよいよ最終回。鳴海と那須田の間に“しがらみ”が生まれることはあるのだろうか。また、鳴海の義理の妹・まゆ(恒松祐里)の“意味深”な一言も気になるところ。バリキャリひとり暮らしの鳴海と、子育て中のまゆ。これは、雅子(松坂慶子)と光子(山口紗弥加)と同じようなマウント合戦が勃発しそうな予感…!
【著者プロフィール:菜本かな】
メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
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