「異能力」は武器か、呪いか…中村倫也の芝居に“歴史”を感じたワケ。『DOPE 麻薬取締部特捜課』第4話考察&感想【ネタバレ】
髙橋海人と中村倫也がW主演のドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系)が放送中だ。正反対バディが新型ドラッグ【DOPE】によって巻き起こる不可解な事件の解決に挑む、新時代の麻取アクション・エンターテインメント。今回は第4話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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異能力を持つがゆえの苦悩
人と違うことは誰だって怖い。多くの人が右に倣えで自分が普通の人間であることを願い、生きてきただろう。
だが、金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』はそれが許されない世界だ。第4話では異能力を持つ苦悩が描かれていた。
第4話では繁華街にあるカラオケ店で、大学生3人が薬物中毒死する事件が発生。3人は覚醒剤を使用しており、うち一人はDOPEも所持していた。加えて、彼らは葛城(三浦誠己)の娘・莉子(平澤宏々路)と同じ大学の生徒で、莉子が覚醒剤を作っていたのではという疑惑も浮かび上がるのであった。
防犯カメラにも莉子の姿が映っており、彼女が犯人かと思われたが、実は「変身」の異能力を持つ木下潤(田中偉登)が裏で罪を着せようとしていた。つまり真犯人なのだが、彼の動機を明らかにしていくとまた苦しさを覚える。
木下潤(田中偉登)が抱えた生きづらさ
木下の妹・れなも異能力者で大学生だった。サークルの活動中にケガをした莉子のために「ヒーリング」を行うと、偶然見つけた宮﨑らに金儲けに利用されてしまう。さらに、れなは親友の莉子にも助けを求めたが、莉子は目を逸らし、最後にはれなは自殺を選んでしまう。そのため、木下はれなの復讐のために一連の事件を巻き起こしていたのだった。
本作の世界での異能力は武器であり、実際DOPEを飲んででも異能力を手にしようとする輩もいる。だが、生まれながらに異能力を持った人は全員が全員自分の武器であり、個性と受け入れられているだろうか。
少なくとも木下は違った。人とは違うことに悩み、生きづらさに苦しんでいた。
「変身」は傍目には便利な異能力であるが、妹との当たり前の日常を壊された木下にとってもはや呪いとも言うべきものだったのかもしれない。「何のためにこんな力があるんですか」と嘆く彼からもその悲痛は見て取れる。
その間、異能力を持つ特捜課の面々も黙ってそれを聞いている。彼らは自分たちの異能力を受け入れそれを活かしているようにも見えるが、彼らにもそれぞれの苦悩がある。
娘に異能力を明かしておらず、自宅では「聴力」という異能力に悩む葛城だってそうだ。だからこそ、「わかるよ。でも…」といった表情で木下を囲んでいた。
才木(髙橋海人)と陣内(中村倫也)それぞれの思い
そんな中、口を開いたのは才木(髙橋海人)だった。「異能力を持って生まれたって、幸せに生きたいじゃないですか。友達や好きな人、家族と一緒に泣いたり、笑ったりしたいじゃないですか。当たり前の毎日をちゃんと当たり前に生きたいじゃないですか」と。それは正義感に溢れる彼らしい言葉で、悪く見れば“綺麗ごと”かもしれない。
しかし、考え続け、願わなければ世界は決して変わらない。自身も異能力を持ち、家族も異能力者という木下と近いプロフィールを持つ才木だからこそ、心に響く言葉だったようにも思う。日々の生きづらさを重ね合わせ、木下のむせび泣く表情に感情移入してしまった人もいたのではないだろうか。
だが、それを聞いていた陣内(中村倫也)の感想は違う。才木の言葉を「刑事ドラマかと思ったよ」と評しながら、「お前たちは当たり前の日々を当たり前に生きろ。俺のはもうぶっ壊されちまったんだよ」と吐き捨てる。
陣内だって元々は正義感にあふれる警官の一人だったはず。しかし、すでに才木の歩んできた道を通った上で悲劇を経験し、復讐を心に決めたのだろう。そんな陣内の苦しい歴史が垣間見えるような一幕でもあった。
第4話では異能力バトルから一歩進み、日常とも通ずる世界が描かれた『DOPE』。だが、ラストでは陣内が戸倉(小池徹平)の家を訪ねる中、管理官の椿(忍成修吾)が死んだという一報を受ける。陣内を怪しんでおり、才木に見張るよう指示していた椿の死は何を意味しているのか。今後のストーリーからも目が離せない。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。
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