ホーム » 投稿 » ドラマ » 「いつかドラマになったら…」が現実に。ドラマ『アンメット』原作漫画家・大槻閑人インタビュー

「いつかドラマになったら…」が現実に。ドラマ『アンメット』原作漫画家・大槻閑人インタビュー

text by 編集部

毎週月曜日22時より放送中の、杉咲花主演のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』。本作は、“記憶障害の脳外科医”という主人公が、目の前の患者を全力で救い、自分自身も再生していく新たな医療ヒューマンドラマ。元脳外科医の子鹿ゆずるとともに、『アンメット』を生み出した漫画家・大槻閑人のインタビューが到着した。

「原作を読んで支持してくれていたことに感激」

©カンテレ
©カンテレ

Q.ここまでの放送をご覧になって、いかがですか?

「すごく上質なドラマ」、その一言に尽きると思います。昨今の日本のドラマは、もっと分かりやすくライトなものが受け入れられやすいのかなと思っていましたが、SNSに寄せられたコメントを読むと、後遺症の恐さや登場人物たちの複雑な心情など、原作で大切にしてきたことは視聴者の方たちにきちんと伝わっていて、『アンメット』の世界が受け入れられたことがとてもうれしかったです。そこには、医療のリアリティーを追求する制作スタッフの本気とキャストの皆さんの素晴らしいお芝居があり、なかでも、杉咲花さんと若葉竜也さ
んのお芝居からは、僕も毎回目が離せないです。

第1話は、出版社の担当編集さんをはじめ8~9人で見たのですが、屋上でミヤビが『今日が明日につながらない』と三瓶に苦しい胸の内を吐露する場面では、作者として2人の過去を知っているからこそ、そこに言葉以上のものを感じて、人目もはばからずボロボロ泣いてしまいました。そのあと、残されたミヤビが1人で泣くシーンも、医者でいたいけれどいられないミヤビの気持ちがひしひしと伝わってきて、杉咲さんが神々しく見えるほど素晴らしいシーンでした。」

正直にいうと、ドラマ化のお話をいただいた当初は、実写化することで原作をもっと多くの人に知ってもらえたら…というくらいの気持ちでした。僕としては、ドラマと漫画は完全に別もので、スタッフの方たちが真摯に向き合ってドラマを作った結果、それが世間からの評価を得られなくても、僕が心血注いで描いた漫画が傷つくわけではないと思っているんです。それでもやはり、自分が描いた漫画をこれだけ上質なドラマにしてもらえたことは素直にうれしいですし、反響も大きくて驚いています」

Q.撮影現場を見学された際は、出演者とどんな話をされたのでしょう?

「偶然にも、僕がここ1~2年の間に観た映画は若葉さんが出演されている作品が多かったので、現場ではドキドキしながら若葉さんに声をかけました。クールな方だと思っていたのですが、とてもフランクに話してくださり、そのギャップにやられてすっかりファンになってしまいました(笑)。

若葉さんは、原作の三瓶の表情をとても熱心に研究してくださっているようでした。たとえば、患者さんにとってすごくつらい宣告をしなければならないとき、三瓶は冷たい顔をするのですが、それはあえて、きついときほど機械的に、ロボットのように振る舞うという感覚で描いているのですが、若葉さんはそういった細かい描写にも理解が及んでいるようで、「たまに三瓶がすごく恐い顔をするんですが、あれはどういう気持ちなんですかね」と質問してくれました。

とっさのことで、どの場面のことを指しているのか聞き返す余裕がなく、すごく曖昧な返事をしてしまったことが心残りなのですが、その質問を聞いて、一見、表情が乏しいようで実は多彩な表情を持つ三瓶をすごく研究されているんだなと感じました」

Q.連載開始当初、それぞれのキャラクターの容姿はどのように決めたのでしょう?

「原作の主人公である三瓶は、いくつもの案を出しました。まず内面を決めようということになり、ワーカホリックでコミュニケーション能力が低め…じゃあ、髪型はあまり気にしないだろうということでボサボサ頭になって、仕事以外のことでは楽でいたいんじゃないかと、ズボンの裾を少しまくってサンダルに。仕事ざんまいなので目元は疲れた感じで猫背…。そういった理屈的なところから固めていきました。対する星前は、髪をしっかりセットして、エリート意識を持っている男。言ってみれば、2人を雑草とエリートのような対比にしました。

連載開始当初、僕は原作の子鹿(ゆずる)先生の思いや書きたいものが、そこまで明確に理解できていなかったんです。それが、作品が進むにつれて、僕自身も患者さんに感情移入するようになって、表情や心の痛みの解像度が徐々に高まってきたなと感じています。とにかくリアリティーを大事に、漫画なので何でもできてしまうのですが、決してリアリティーラインを壊さないように、「これじゃ漫画だよ」と言われないようにしようと思って描いています」

Q.最後に、視聴者へメッセージをお願いします。

「今まで、あまり原作ファンの方の声を聞く機会がなかったのですが、ドラマの放送後、『ドラマもおもしろいけど、漫画もおもしろいよ』とSNSに投稿してくださっている読者が想像以上にたくさんいて驚きました。そういった生の声を聞いたのが初めてだったので、こんなにたくさんの人たちが原作を読んで支持してくれていたんだと、感動で胸が震えました。

僕は長いこと『コウノドリ』の鈴ノ木ユウ先生のアシスタントをしていて、そのときに、自分には医療ものは描けない、プレッシャーが恐くて無理だと思っていたんです。それが、ご縁あって医療もののお話をいただき、僕には無理だなと思っていたら「原作者は元脳外科医の先生ですよ」と言われて、それならできるかも!と。以来、子鹿先生に甘えっぱなしで描いています。

担当編集者さんと狭い部屋で煙草を吸いながら、「いつかドラマになるといいね」なんて夢を語ったこともありますし、それが今現実になって、本当に幸せです。ドラマを100%楽しんだあと、気が向いたら原作の漫画もぜひ読んでみてください(笑)」

【大槻閑人】

第73回ちばてつや賞一般部門準大賞。代表作は『アイターン』(全4巻)。漫画を担当する『アンメット―ある脳外科医の日記—』が『モーニング』(講談社)で連載中。

【5月13日(月)放送 第5話あらすじ】

寺の住職・成海(三宅弘城)が、読経中に意識を失い運び込まれてくる。検査の結果“もやもや病”が見つかり、治療後も脳梗塞や脳出血を引き起こす可能性をはらんでいることから、主治医のミヤビ(杉咲花)は、今後、お勤めは一切やめるよう宣告。それは事実上の引退勧告で、成海はその言葉を静かに受け止めるが、弟子の碧聴(大友律)は不安を隠せない。

早速、成海の手術が行われることになり、三瓶(若葉竜也)はミヤビを術者に指名する。しかし、もやもや病の血管は細く、手術の難易度も高いため、今の自分にはまだ無理だと反論するミヤビ。「川内先生ならできます」――三瓶のその口ぶりは、まるで手術の成功を確信したかのようだったが、ミヤビは、麻衣(生田絵梨花)から「三瓶先生のことは、あんまり信用しないほうがいい」と言われたことが胸の奥に引っ掛かっていた。

一方、全科で専門医レベルを目指す星前(千葉雄大)は、自分にも脳外科の手術をさせてほしいと三瓶に頼むが、あっさり断られる。星前は、自分の専門以外の知識がない医者を「専門バカ」と呼び、それによって困る患者を1人でも減らしたいと思っていたが、三瓶はその考えを真っ向から否定。すると星前は珍しく声を荒げ、相容れない2人の間には嫌な空気が漂う。しかし実は、星前の高い志の裏にはある理由が隠されていて…。

【作品概要】

【タイトル】 『アンメット ある脳外科医の日記』
【放送枠】毎週月曜よる10時(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)
【出演】杉咲花 若葉竜也 岡山天音 生田絵梨花 山谷花純 尾崎匠海(INI) 中村里帆 ・ 安井順平 野呂佳代
千葉雄大 ・ 小市慢太郎 酒向芳 吉瀬美智子 井浦新
【原作】子鹿ゆずる(原作)・大槻閑人(漫画)
「アンメット-ある脳外科医の日記-」 (講談社「モーニング」連載)
【脚本】篠﨑絵里子
【音楽】 fox capture plan
【主題歌】あいみょん「会いに行くのに」(unBORDE/Warner Music Japan)
【オープニング曲】上野大樹「縫い目」(cutting edge)
【演出】Yuki Saito 本橋圭太
【プロデューサー】 米田孝 本郷達也
【制作協力】MMJ
【制作著作】カンテレ

【関連記事】
【写真】ドラマ『アンメット』劇中カット一覧
若葉竜也“三瓶“にも引けをとらない…芸達者・岡山天音の二面性のある芝居に心掴まれるワケ『アンメット』第4話考察レビュー
若葉竜也がいじらしい…”三瓶”が回を追うごとに魅力を増すワケ。随所で光る制作陣の演出術。『アンメット』第3話考察レビュー

error: Content is protected !!