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傑作『アンメット』の監督が語る、“今までにないドラマ”になったワケ。Yuki Saito監督ロングインタビュー【前編】

月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が6月24日(月)に最終回を迎える。今回は、本作のチーフ演出を務めるYuki Saito監督にインタビューを敢行。杉咲花・若葉竜也への印象や細部にわたる演出、本作に込めた思いなどたっぷりとお話を伺った。(取材・文:あさかしき)

ピンマイク越しに聴こえる若葉竜也の鼓動

『アンメット』第6話より ©カンテレ
アンメット第6話より ©カンテレ

―――『アンメット ある脳外科医の日記』(以下、『アンメット』と表記)は原作漫画の主人公は三瓶ですが、ドラマではミヤビが主人公です。監督としてこのアイディアはどう思われたのでしょうか?

「僕も番組プロデューサーの米田孝さんからお話をいただいた際に、ミヤビの視点で描くということに驚きました。ただ、ミヤビは記憶障害という後遺症を負いながらも明るく生きているキャラクターなので、そんなミヤビが日々どんな生活を過ごしているかを想像したときに、『これは凄いドラマになるぞ』と思いました。

朝起きたら記憶が無くて、日記から必死に情報を手繰り寄せて、自分の中でイメージしてから人と会うって、想像するだけでもすごく辛いことだと思います。そんな逆境下でも、ミヤビはあれだけ軽やかに生きている。そんな彼女の日常を丹念に描くことで、いろんなドラマや葛藤が見えてくるのではないかと思ったんです」

―――Yuki監督がミヤビを演じた杉咲花さんと組まれたのは今回が初めてですね。監督から見て、杉咲さんはどんな女優さんですか?

「今まで彼女と仕事をした人に話を聞くたびに、口をそろえて『杉咲花はすごい』と言っていて、今回、その凄さを目の当たりにし続けたと言いますか…。『アンメット』が沢山の人に評価していただいているのも、彼女が座長だから、というのが一番大きいと思っています。作品に向き合う姿勢、覚悟の強さが尋常じゃありません。監督と演者という立場の違いを超えて、人として尊敬しています」

―――三瓶を演じた若葉竜也さんは、これまで主にドラマではなく、映画をメインに活動されていた俳優さんです。本作への出演が決まった時、Yuki監督も驚いたのではないでしょうか?

「僕も、若葉さんは映画畑の人だと勝手に思っていたので、この仕事を受けてくれたことにまず驚きました。かねてから彼の出演作を観ていて俳優として興味があったし、ドラマで彼を撮れる機会はそうそう無いと思っていて。クランクイン前は、彼が加わることでどういうドラマになるのか…楽しみがまた1つ増えた、という感覚だったと思います。

撮影に入ると、やっぱり素晴らしかった。芝居に嘘が無いし、思ったことをきっぱりとこちらに言ってくれる性格も格好良い。それでいて、かわいい一面もあるんですよ(笑)」

―――若葉さん演じる三瓶もチャーミングなところがありますが、演じたご本人にも通じるところがあるのですね。

「そうなんです。あと彼は飄々として見えて、実は大変な緊張感をもって撮影に臨んでくれていて。本番では、若葉くんのバクバク鳴っている心臓の鼓動がピンマイク越しに聴こえてくるんです。

なぜあんなに緊張しているのかいうと、『良いものを撮りたい』という思いが人一倍強くて、自分自身のパフォーマンスやこの作品にかける期待が大きいからだと思うんです。期待を超えるために背負うものもまた大きいわけで。それが心臓の鼓動で如実に伝わるんです」

―――杉咲さん、若葉さんをはじめ、キャスト陣が作品にかける思いをひしひしと感じながら、演出をなさったわけですね。Yuki監督も相当な緊張感をもって現場に臨まれたのではないでしょうか。

「そうですね。現場では常に、演者のまなざし、姿勢、仕草などわずかな変化も見逃しちゃいけないという気持ちでいました。いかにしてこの素晴らしいお芝居を視聴者の皆さんに届けるのか。それを考えるのが演出家としての僕の仕事です。

現場は和気あいあいというよりかは、ほど良い緊張感が張り詰めていて、毎朝現場に行く前は、自分に『ヨシっ』と気合を入れていたし、それは他のスタッフ、キャスト、皆そうだったのではないかなと思っています」

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