劇場に響いたすすり泣く声…ファンが歓喜した終盤のサプライズとは? 映画『室井慎次 生き続ける者』考察&評価レビュー
text by 小林久乃
1997年に放送され、翌年公開の劇場版が空前の大ヒット。国民的映画シリーズと言っても過言ではない『踊る大捜査線』。二部作の後編となる『室井慎次 生き続ける者』が公開中だ。今回は、多角的な視点から作品の魅力に迫る。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
※このレビューでは映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご注意ください。
【著者プロフィール:小林久乃】
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報は
劇場に響いた観客のすすり泣く声
ラストシーン、映画館からすすり泣く声が聞こえてきた。上映されている作品は『室井慎次 生き続ける者』だ。私も例に洩れず、涙が頬を伝っていた。上映中盤も泣いていたので、アイメイクは落ちた。
先月公開の『室井慎次 敗れざる者』同様、どこかコミカルさを含んだ内容なのかと思いきや、そうではなかった。今回は主人公の柳葉敏郎演じる、室井慎次という人物をよく知ることができる作品だ。連続ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系・1997年)という刑事ドラマから始まって、ここまで来たけれど、本作は完全な人間ドラマだった。あらすじはこうだ。
警察官を早期退職した室井は地元の秋田県で、事件に巻き込まれた3人の子どもの里親となって生活していた。自宅前で発見された変死体事件をきっかけに、室井の周辺がにわかに騒がしくなる。自宅敷地内の放火、約20年前に起きた洗脳者による殺人事件の犯人と、幼児虐待を受けていた、里子の父親の刑務所釈放。地元住人や、不良たちとの関わり方。室井はひとつひとつに向き合っていく。
私も『踊る〜』シリーズの熱血ファンだ。ドンズバ世代だったこともあるけれど、青島(織田裕二)と室井、すみれさん(深津絵里)には何度も人生を励まされてきた。そんなわけで若干のネタバレを含んでしまうこと、ご容赦ください。