「全ての2割は伊勢丹に持っていかれる」
現実の歌舞伎町の頂点に君臨するのは?
―――必要最低限のリアルを確保する一方、ドラマであるからには、現実を丸写しするというわけにはいきません。その辺のバランスをとるのが難しそうです。
「ホストクラブのシーンはリアルを言ったらもうキリがありません。なので、宮藤さんをはじめとした作り手の方々には『こうしたらギリギリ理屈は通ると思います』という感じで、アドバイスをさせていただきました。
例えば、2024年4月以降、大手のホストクラブは歌舞伎町での売掛を全面禁止しています。それなのに劇中で、ホストクラブ側が売掛を勧めるのは不自然なので、病院沙汰になるような事件が起きて、後から請求書が来るという形であれば筋は通ると思います、とお話しました。参考として、写真を大量に送ったこともあります」
―――佐々木さんの提案やアドバイスが、具体的に反映されているシーンがあれば教えてください。
「第2話で平岩紙さん演じる“はずき”が、ピラミッドの図を使って歌舞伎町の経済の流れをわかりやすく解説していましたが、あれは私がスタッフの方々に説明する際に使っていたものです。実は、私が描いたピラミッドには、あの図の横に伊勢丹があって、全ての2割は伊勢丹に持っていかれる、というお話をしました(笑)。ホストはハイブランドが軒を連ねる伊勢丹が大好きですから。
表現が露骨すぎるのでドラマでは使えなかったのでしょう。でも、『下からおっさん、若い女、ホスト、頂点が伊勢丹と美容医療です』と私が言った言葉がしっかり組み込まれていたので、それを聞いた時はすごく嬉しかったです」
―――お話を伺っていると、物語の内容はもちろん、細かいセリフに至るまで、佐々木さんのアドバイスがドラマに寄与しているのがわかります。美術や小道具に関するアドバイスもされたのでしょうか?
「第3話で、主人公の1人である享(仲野太賀)がホストの宣伝トラックとコラボするシーンがありましたが、あれは実際にあります。最近だと、羽賀研二やいしだ壱成がホストクラブとコラボレーションをしていますが、それと似たものとして、美容皮膚科の先生が自分の顔写真をデカデカと使ったトラックを走らせているのは実際にあることです。
『これ面白いので使ってください』って写真を送ったら、ああいう形で使われていて、それもすごく嬉しかったですね」
―――実際にあるんですね(笑)。
「あとは、私のデビュー作である『「ぴえん」という病』(扶桑社新書)に細かく書いてありますが、ホストと一緒に姫(客の女性)の自殺を止めたことがあるってお話もさせていただいて。第2話はそれがだいぶ反映されていますね」