劇的に描かれた歴史の転換点
第26週 最高裁で「尊属殺人は憲法違反」の判決が下されたシーン
虐待の末に妊娠・出産までさせられていた父親を殺した罪を問われていた美位子(石橋菜津美)の最高裁での裁判。尊属殺を争点とし、ズラリと並んだ15名の裁判官たちを前にして、よねは寅子の口癖である「はて?」と問う。
いまの価値観であれば、道徳を踏みにじったのは誰であるか、改めて言葉にするまでもないほどに明確だ。いや、それ以前に、当時であっても本当は憲法の内容に反するはず。それでも、尊属殺規定がある以上、美位子の罪は重くなってしまう。
畜生道に落ちた父親でも、尊属として保護し、被告人は従順な女体であることを要求されるのか? もし尊属殺の重罰規定が憲法に違反しないものとするならば、無力な憲法を、無力な司法を、無力なこの社会を、嘆かざるを得ない。
よねが言うからこそ、実に真に迫った言葉だった。寅子たちにとっては法の下の平等を保障する憲法の正当性をかけ、20数年前に叶わなかった穂高(小林薫)の遺志を継ぐものでありながら、よねにとってはその人生をかけた戦いでもあった。
結果的に原判決は破棄され、憲法違反とする判決文が読み上げられる。歴史の転換点を劇的に描いた名場面だった。