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芦田愛菜の圧巻の演技

芦田愛菜
芦田愛菜Getty Images

二朗のカフェでコンサートの打ち上げをする晴見フィル一同だったが、若者たちの姿がない。演奏会の直後だというのに練習をしているらしい。なんでそんなに練習がしたいのか?と問う二朗に、瑠李が「依存症みたいなもの」と答える。

ここからの演出が圧巻だった。

「嫌気が差して、離れても、触れてしまったら最後。素晴らしい音楽を聴けば余計に心が乾く。地獄に落ちるとわかっていても、奏でたくなる。自分の音を」というナレーションが、瑠李の声から、次第に響の声に変わっていく。

このとき、天音(當真あみ)が練習中のバイオリンを置きっぱなしにしているのを響が見つけていた。手を伸ばし、すっと構える。たった一音、音が鳴った瞬間に空気が変わった。長いキャリアを感じさせる繊細かつ大胆な指遣いと、演奏の酸いも甘いも味わってきたようなどこか苦しげな表情から、彼女はたしかに天才バイオリン奏者だったのだと、そしてその才能はいまなお色あせていないのだという圧倒的な説得力があった。

夏目に対して食ってかかるシーンしかり、演奏シーンしかり、芦田愛菜という俳優はまだまだ底知れない。

まだまだ親子の溝は埋まりそうにないが、夏目にも響にも、同じくらい感情移入して観ている視聴者が多いのではないだろうか。それはきっと、娘に嫌われる中年から、“可哀想”というレッテルを剥がしているから。

晴見フィルが直面する難局を奇想天外なアイデアで軽々と乗り越えてしまう夏目というキャラクター性も多分にあるが、西島だからこその、魅力的な存在に昇華しているといえるだろう。

響はまだ、心が乾くほど焦がれている情熱を、その胸に宿している。そのことに確信を持てたとき、父として、音楽家として、夏目はどんな行動を起こすのか。

西島と芦田の演技合戦から、ますます目が離せない。

(文・あまのさき)

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