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「鮮度の高いナマの感情を表現したい」今泉力哉監督作品で存在感を発揮。俳優・佐々木詩音、独占ロングインタビュー【後編】

text by 福田桃奈

2018年PFF(ぴあフィルムフェスティバル)でグランプリを受賞した『オーファンズ・ブルース』に出演後、2021年には同監督のPFFスカラシップ作品『裸足で鳴らしてみせろ』で主演を務めた、若手俳優の佐々木詩音さん。今回は佐々木さんにロングインタビューを敢行。後編では、今泉力哉監督『窓辺にて』への出演、俳優としての葛藤やこだわりについて伺った。(取材・文:福田桃奈)

今泉力哉監督『窓辺にて』に出演
きっかけとなったのは“殴り書き”のような日記

撮影:宮城夏子
撮影宮城夏子

―――今泉力哉監督の『窓辺にて』では、気鋭の小説家・荒川円役でご出演されています。出演のきっかけは佐々木さんがTwitterに投稿した日記を見て、今泉監督が直接オファーをしたそうですね。その日記にはどんなことが書かれていたのでしょうか?

「ある一人の青年がしんどい時期に書いた、殴り書きのようなものです。自分の中の処理しきれない感情や、苦しいという思いを無理やり言葉にして書き殴ったようなもので、B4の紙に書いたものをTwitterに載せたら監督が見つけてくださりました」

―――いつ頃書かれたものだったのですか?

「『裸足で鳴らしてみせろ』を撮り終えて、間もなくのタイミングだったと思います。元々、撮影に入ると気持ちの浮き沈みが激しいタイプなんです。

『裸足で鳴らしてみせろ』は自分の中で達成感を覚えたとてもいい現場でした。人生を振り返ってもここまで『やりきった』と思えるようなことはそうそうありません。そうしたこともあり、クランクアップ後は何をしたらいいかわからなくなり、元の生活に戻るのが苦しかったのです」

―――そうした気持ちでお書きになった日記がまた映画を引き寄せることになると…。

「皮肉な感じですけどね(笑)」

―――撮影中は役と自分との境界線が分からなくなるような感覚があるのでしょうか?

「今までは役を自分の方に引き寄せると言いますか、自分を通して役を演じるというイメージだったとすれば、『裸足で鳴らしてみせろ』の時は、自分も役に寄っていくし、向こうも
こっちに寄ってきたりで、役と自分自身のパーソナリティが混ざり合うような、初めて役が抜けないという感覚を経験しました」

―――苦しい状況からどのようにして乗り越えましたか?

「周囲の人に助けていただきました。迷惑も掛けてしまったのですが、お陰で何とか戻れたという感じです」

―――今後キャリアを重ねていくうちに、心身に負担をかけない戻し方が見つかるといいですね。

「そうですね。毎回これだけ消耗すると生きていられなくなっちゃうので…。一方で、それくらいの熱量は常に持っていたいという気持ちもあります。

とはいえ、上手く切り替えられるようになりたいですね」

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