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眺めるだけで現実逃避ができるオシャレなアニメ作品

『ファンタスティックMr.FOX』(2009)

宮下兼史鷹
写真:Wakaco

―――これまで挙げていただいた作品とは毛色の異なる映画が挙がりました。

「ウェス・アンダーソン監督って、唯一無二の世界を描ける人だと思ってるんです。もちろん全作品好きですが、この作品はダントツですね。映像が美しくてオシャレなものを撮るという印象が強いですが、ストーリーも素晴らしいんです」

―――多くの名作があるなか、本作は、ウェス・アンダーソン監督が初めて製作したアニメ作品ですね。

「そうです。より世界観が強く出るというか、キャラクターの人物像が、実写よりアニメの方がより際立っているなと。アニメだと『犬ヶ島』(2018)とも迷ったんですけど、こちらに軍配を挙げました。

物語的には非常にシンプルで、泥棒の狐・Mr.フォックス(ジョージ・クルーニー)が妻(メリル・ストリープ)と子供(ジェイソン・シュワルツマン)のために、その稼業から足を洗うというものです。でも、泥棒しかやってこなかったので、父親になった自分のジレンマにもがくんです。で、最後に、人間相手に世紀の大泥棒をする計画を立てるという」

―――特に印象的なシーンがありますか?

「全体的に、動物たちの表情に笑ってしまうんですよ。ウェス監督の作品の中で、映像を観るだけでも1番笑わせてくれる作品じゃないかなあ」

―――こちらも、『スパイダーマン』と同様、流し見できる感覚でしょうか?

「眺めているだけで現実逃避ができる気がするので、夜寝る前に観たくなります。それでいて、しっかりとストーリーが入ってくる感触がたまらないですね。 1度画面に映すと、僕の自宅の空気感が、それこそ“ファンタスティック”に変わるんですよ!」

―――大人になると、そういう感覚にしてくれる映画って大事ですよね。

「はい。映画って、子供の頃に観たものの方が、少年期の補正みたいなのが働いて、思い出とともに蘇るものだと思うんです。でも、大人になってから観た作品にも、同じ感覚を覚えた、稀な映画は大事にしたいですね」

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