若者は本当に映画を観ないのか? 若年層から爆発的人気を誇る“縦型ショートドラマ”、作り手に訊く成功のワケ【前編】
若年層を中心に爆発的な人気を誇る縦型ショートドラマ。「#ショートドラマ」が付いた動画の総再生回数は727億回を超え、『TikTok上半期トレンド大賞2024』では大賞を受賞するなど大きな話題を呼んでいる。そこで今回は、総再生回数11億回を誇るこねこフィルムへの取材を敢行。そこにあるのは、国内の映画業界を盛り立てたいという熱い思いだった。(取材・文:司馬宙)
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【プロフィール】
三野龍一(映画監督/こねこフィルムディレクター兼代表)
三野和比古(脚本家/こねこフィルムプロデューサー兼代表)
兄の三野龍一が監督、弟の三野和比古が脚本を担当する兄弟で映画制作(MINO Bros.として)を行う。長編デビュー作である『老人ファーム』では、兄弟独自の世界観を作り上げ、1作目にして数々の映画祭やコンペにて高い評価を受ける。2019年には渋谷・ユーロスペース他・全国の劇場で公開。『鬼が笑う』は各国の映画祭にノミネートされ、2022年6月17日(金)よりテアトル新宿ほか、全国公開。2023年には三野龍一監督作である映画『近江商人、走る』が全国100館の映画館で上映を果たす。
2023年6月、映画やドラマの制作現場で経験を積んだクリエイターたちが新たな価値を創造するために集まったチーム「こねこフィルム」を開始。現在SNS総フォロワー250万、動画の総再生数は15億回を越えている。(2024年10月2日時点)
既存の映画業界への疑問が出発点
―――三野龍一監督は、元々商業映画を制作されていたと伺いました。縦型ショートドラマに参入されたきっかけを教えてください。
龍一「一番は既存の映画業界の体質への疑問ですね。2023年に『近江商人、走る!』という商業映画を制作したんですが、その時に、宣伝の方法が今の時代に全く合ってないな、と痛感しました。
だって、地上波のテレビに数千万円つぎ込むんですよ。広告を打ったところで、実際にその広告を見るのはせいぜい数百万人で、その中でわざわざ映画館に足を運ぶ人となると、更に限られてくる。
それだけ無駄なお金が出るんであれば、キャストやスタッフにお金を回してほしいと。そういう思いから、こねこフィルムを立ち上げました」
和比古「あとは、映画業界の既得権益ですね。僕は設立当時、マーケティングの仕事をしていたんですが、複数の広告代理店や配給会社が、制作費の中抜きをしているという実態をよく耳にしていました。
そんな中、中国で縦型ショートドラマが話題になっているという話を耳にしました。で、映画館を抑えなくても自分たちの作品を発信できるし、試行錯誤も簡単にできるんじゃないか、と気づいたんです」
―――では、こねこフィルムの場合は、元々縦型ショートドラマがやりたいというわけではなかったんですね。
和比古「そうですね。縦型ショートドラマはあくまでも、クリエイティブの強さを世の中に伝えていくための“手段“という位置づけで、軸足は映画に置いているつもりです」