恋愛作品でしか味わえない横浜流星の色気とは? ドラマ『わかっていても the shapes of love』考察レビュー
横浜流星主演のABEMAオリジナル連続ドラマ『わかっていても the shapes of love』がABEMA及びNetflixにて配信中だ。鎌倉にある美術大学を舞台に繰り広げられる珠玉のラブストーリー。主演を務める横浜の魅力を多角的な視点から紐解く。(文・加賀谷健)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:加賀谷健】
コラムニスト・音楽企画プロデューサー・クラシック音楽監修クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。
女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、テレビドラマ脚本のプロットライターなど。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
赤と白のグラデーションを生きる横浜流星
『わかっていても The Shapes of love』(ABEMA・Netflix、2024、以下、『わかっていても』)第1話、助手として鎌倉市立美術大学に勤務する浜崎美羽(南沙良)は、元彼が制作した石膏を前に唖然とする。別れないでくれと懇願した彼女の姿態をストレートに模写した作品だったのである。
作品を見た他の学生が「エロい」と率直な感想をもらす。あられもない格好で作品化した自分を見て、怒りがわく。かといって彼女が制作する彫刻作品は、特別評価されているわけでもなく、元彼からの正論を打ち負かすことも今はできない。
寄る辺ない諦念を抱いて美羽は学内を歩く。すると彼女と並走するかのように、かつかつ靴音をならして闊歩する男性がひとり。その人は左手にペンキ缶を持っている。どうするのか。たぷたぷに入った中身を記念碑らしき銅像にざばっと浴びせるのである。
美羽の顔に赤ペンキが数滴飛ぶ。事を終えたその男性、香坂漣(横浜流星)は、一部始終を見ていた彼女の側へきて「ごめん」と声をかける。本作冒頭の導入場面で描かれるこの突発的な赤ペンキの衝撃から不思議と思い起こすもうひとつの色がある。それは、「ユリユリ」の愛称で広く視聴者から支持された、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系、2019、略称:『はじこい』)のキャラクターである由利匡平の署名的なピンクの髪色だ。
赤に白を混ぜるとピンクになる。白の配合量でグラデーションはさまざま。ユリユリの髪色は赤が多いわけでも白が強いわけでもない。ちょうど中間色くらいのピンクだった。『はじこい』で大ブレイクした横浜流星が、同作のちょうど1年後に出演したのが、『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(日本テレビ系、2020、略称:『シロクロ』)。
同作の横浜は、作品タイトルが連想するように、ビジュアルのどこにも赤やピンク要素はなく、真っ青に近い白さ。横浜流星とは、色の変化を反映する俳優なのかもしれない。その意味で『はじこい』で中間色的なピンクを自身の演技のグラデーションの起点にした横浜が、『わかっていても』では白を完全に抜いてはっきりビビッドな赤色を強調する存在に生まれ変わったと考えられる。