当事者意識を持って見ることができるラブストーリー
映画『ファーストキス 1ST KISS』のあらすじはこうだった。
“硯(高畑)カンナ(松たか子)は突然、電車事故によって夫・硯駈(松村北斗)を亡くす。ふたりの関係は倦怠期、離婚も決めていたような関係だったのに、カンナは喪失感を抱えてしまう。ある日、車を運転していたカンナは15年前、夫と出会った夏に思いがけずタイムトラベルをしてしまう。そうだ、この偶然を使って運命を変えれば夫は死なずに済むかもしれない。そう思いつき、現代と15年前を行き来して、駈とコミュニケーションを取ろうと試みる。40代のカンナと、20代の駈との行方はどうなるのか”
あらすじだけ読めば「ああ、ドラマでも流行っているタイムリープものでしょ」という古典的な作風の印象が漂う。が、その観念は捨てたほうが良さそうだ。なぜかといえば、この映画はすべての年代が当事者意識を持って見ることができるラブストーリーだから。タイプリープは作劇上必要な単なる仕掛けに過ぎず、主眼はそこにはない。そしてとても贅沢が詰まっている作品である。