坂元裕二による珠玉の言葉の数々
何が贅沢なのか。
まずは今、日本で1番贅沢なスタッフが作品に集まっている。監督は塚原あゆ子。映画『ラストマイル』、『グランメゾン★パリ』、ドラマ『最愛』(2021)、『海に眠るダイヤモンド』(ともにTBS系、2024)など、私たちの視聴欲をそそる作品を世にリリースしている。彼女が創り出す作品はどれも物語を完結させているように見せながら、気持ちの良い残像を観る側に残すテクニックに魅了される。今、監督陣の中でいちばんキラキラと輝いている人だと思う。
脚本は坂元裕二。この四文字が好きな日本人は多いと思うが、もう説明不要の人気脚本家が『ファーストキス 1ST KISS』を生み出した。劇中、紡がれる言葉の数々は胸をすくう。
「好きなところを発見しあうのが、恋愛。欠点を見つけ合うのが、結婚」
「これ以上、僕をドキドキさせないで」
「なにさ、小娘」
「選ばれなかった者の負け惜しみ」
暗い中でメモしたので若干、自信はないけれど、こんなセリフが私には残った。俳優が放つセリフひとつひとつに耳をすませてほしい。彼の考えた物語は私たちにつきまとう、パートナー問題について全世代を置いてけぼりにしていなかった。どこかに答えが見つかる。加えて、撮影監督には映画『ドライブ・マイ・カー』の四宮秀俊、照明は映画『花束みたいな恋をした』の秋山恵二郎。俳優たちが彼らの手によって、気持ちよさそうに演じていた。画面いっぱいに彼らのエスプリが伝わってきた。
彼らの起用を決めた作り手の判断も贅沢だ。