阿部寛の表情の凄まじさ

©2025『ショウタイムセブン』製作委員会
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 メインとなるのは、犯人と阿部寛演じるキャスター・折本とのやりとりだが、犯人の要求に少しずつ折本は追い詰められていく。…が、同時に折本は生き生きとしていく。

 ラジオ局でパーソナリティを務めている折本はなんとも覇気がなく、とてもじゃないが、やりがいを持って仕事をしているようには見えない。それが謎の電話がかかってきて、実際に爆破事件が起こったときから目の色が変わる。

 生放送に出演するために、スーツに着替え、ネクタイを締めているときの生きる気力に満ち溢れている表情の凄まじさよ! 野心というのはハッキリと表情に現れるのだな、と感心してしまう。これからステージに立ち、観客たちの心を掴んでやろう。そんなふうにも見える。

 しかし、スタジオで起こっていることは「ショー」ではない。怒りを露わにする謎の男、男と面識があるという人物の登場、男の言葉通りに起こる爆破。スタジオには血が流れる。生放送としては異例の事態だ。人に危害が加えられている、命の危機さえあるというのに、視聴率は上がっていく。「狂っている」。そう思うが、実際にこのような報道番組がオンエアされていたら、あなたはどうするだろうか。

 緊迫感が溢れるシーンの連続だが、折本は危機感よりも、興奮が伝わってくる。誰かが問題を起こしたとき、事件や事故が起きたとき。ショッキングな内容であればあるほど、センセーショナルに報道をする。まるでショーのように。そうすればするほど、現実味が薄れていくさまは、ハッと我に返ったときに、ゾッとする。そして、今、私たちが観ている報道番組とも大差がないのではと気づいて、二度ゾッとする。

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