「ショートフィルムって凄く面白い」短編映画『ヒューマンエラー』『さんぽ道』監督・香月彩里インタビュー

text by 福田桃奈

「MIRRORLIAR FILMS短編映画プロジェクト」にて選出された『ヒューマンエラー』、そして「ぐんま次世代映像クリエイターコンペティション」にて選出された『さんぽ道』。脚本・監督を務めたのは、舞台女優として活動する香月彩里。今回は、そんな香月さんにインタビューを敢行。製作秘話についてお話しを伺った。(取材・文:福田桃奈)

「15分だったら作れるかもしれない」
短編映画への挑戦

『ヒューマンエラー』
『ヒューマンエラー』

ーーMIRRORLIAR FILMSで製作された映画『ヒューマンエラー』は、AI詐欺が多発する社会をコミカルに描いている作品です。処女作となりますが、製作の経緯を教えてください。

「元々年に一度自主公演の舞台をやっていたんですけど、コロナ禍によりできなくなり、何か映像で面白いことができないかなぁと、架空で映画の予告編を作ってたんです。エイプリールフールに『初主演映画の予告編』とか、どこにも流れることがないWEB CMとかを沢山作っていて。

そうしたら妹が『ちゃんと1本作ってみて応募してみたら?』と、MIRRORLIAR FILMSの短編映画プロジェクトを教えてくれてたんです。『15分だったら作れるかもしれない』と思い、製作することになりました」

ーー本作は、AI詐欺にあった主人公が、二度とAI詐欺に合わないために、人工知能では考えることのできない合言葉を考えます。「人間にしかできないことは何か?」という問題は、普段俳優をやられているからこそ、より感じるテーマのように思いました。

「何年後かにAIの登場によって無くなる職業というのがネットに出ていて、本当に人間にしかできないことを考えていかなければいけない未来になるというのは漠然と思っていました。

そんな中、姉がアメリカに住んでいるんですけど、実際にAI音声による詐欺が流行していて、『家族で合言葉を考えた方がいいかもしれない』という連絡が来たんです。早速家族で合言葉を考えていたのですが、その様子が面白かったので映画の題材にすることにしました」

「生き物として自然な摂理なのかもしれない」
群馬を舞台に物語を紡ぐ

『さんぽ道』
『さんぽ道』

ーー2作目『さんぽ道』は、犬を飼いたいと懇願する夫が、妻に許可をもらうべく、1ヶ月犬のぬいぐるみを散歩させることを条件に、毎日ぬいぐるみを散歩させます。風変わりな夫なのかと思いきや、その訳には優しさと切なさがある作品です。この作品の着想について教えてください。

「元々田園風景が好きで、いつか田んぼをバックに映画が撮りたいと思っていました。『ぐんま次世代映像クリエイターコンペティション』へ企画を応募するために実際に群馬へ訪れたのですが、犬を連れて田んぼ道を歩いている人を多く目にし、ふと『犬ではないものを散歩させている人がいたら面白いな…』と思いました。そこから犬が飼いたくて、犬のぬいぐるみを散歩させているオジサンという発想に至り、ではなぜその人が犬を飼いたいのか?という風に、どんどん物語を広げていきました」

ーー本作には蚕や繭が登場しますが、モチーフは何ですか?

「群馬は養蚕が盛んだったので、養蚕農家さんを見学させていただいたんですけど、お蚕から繭になるまでの過程に感動したんです。

お蚕は、小さな格子の部屋の中で繭を作るのですが、部屋を決められず迷う子や、すぐに部屋に入らない子がいたりして、色んな子がいたんです。それを見て、人間だけが思考したり感情を持っているのではなく、みんな様々なことを思いながら生きているし、それは生き物として自然な摂理なのかもしれないということに気付かされました。またこの物語に登場する夫婦とも重なるなと」

ーー郷愁を感じさせる音楽がとても素敵でした。

「音楽はめちゃくちゃこだわりました。主張しすぎず、物語に寄り添うようにバランスを考え、弦楽器を中心にオリジナルで作っていただきました。

弦楽器の弦は張っているほどいい音が出るというのを聞いたことがあったんですけど、本作の登場人物たちは、みんな心に張り詰めたものを持っているので、そことリンクさせたいと思い、作曲家のNANAさんにお願いしました。見事に私のリクエストに応えていただき、上映会でも音楽を褒めていただけるので、こだわりを感じ取っていただけて嬉しいです」

ーー最後に、これから観る方にメッセージをお願いします。

「私はずっと舞台の世界で生きてきて、自分が撮るようになってから色んな作品を観たのですが、ショートフィルムって凄く面白い。本当に短い時間で描かれていますし、世界にはこんなにも沢山の短編作品があるんだと知りました。是非本作をきっかけにショートフィルムの面白さに気付いていただけたら嬉しいです」

(取材・文:福田桃奈)

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【了】

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