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「アクションシーンは北野武映画最高レベル」映画『首』の最速レビュー。カンヌ映画祭で上映。現地メディアの一部は酷評も

text by 編集部

第76回カンヌ国際映画祭で、北野武監督の6年ぶりの新作『首』がカンヌ・プレミア部門で披露され、熱狂的なスタンディング・オベーションで迎えられた。しかしながら、聞こえるのは絶賛の声だけではない。現地のメディアの一部はこの作品に厳しい声を投げかけているようだ。今回は現地メディアによる最速レビューをご紹介する。

北野武監督、構想30年の歴史大作
「物語が複雑すぎる」との声も

映画首カンヌ国際映画祭の様子

北野監督がカンヌを訪れるのは、2010年の『アウトレイジ』以来だ。会場はまるで北野武を待ち望んでいたかのような反応を見せ、熱狂的なスタンディング・オベーションが起こった。一方、厳しい意見を寄せる現地メディアも。今回は米Deadlineが寄せたレビューを紹介する。

1990年代初頭、善対悪の二項対立に基づいた明快な香港映画が人気を博す一方、1989年に『その男、凶暴につき』でデビューした北野武はその対照的とも言える、異色のアクション映画を続々と作り上げた。一作ごとに国際的な評価は高まりを見せ、1997年の『HANABI』では、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。

しかし、2003年の映画『座頭市』の成功後は若干低迷期に陥る。実験的で半自伝的な3部作『TAKESHI’S』、『監督・ばんざい!』、『アキレスと亀』は、自虐的な作品にしか思えず、まるで挫折した芸術家が、将来のことを考えず、大衆のイメージを破壊するような作品であった。

次に製作された3部作『アウトレイジ』シリーズは、日本国内ではヒットを記録したものの、海外では「ピークを過ぎた作家の中途半端な作品」と受け取られる傾向が強かった。

その第1作目である『アウトレイジ』(2010)は、2010年カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、第2作目『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)は、ヴェネチアのコンペティション部門に出品されるも、5年後には第3作目『アウトレイジ 最終章』が同映画祭でコンペティションの枠外とされた。

今回の北野武監督の最新作『首』(2023)の物語は、一国一城の主である織田信長が、信頼する明智光秀ら部下に裏切り者を追い詰めるよう命じるが、その部下達に寝込みを襲撃されるという1582年6月の「本能寺の変」をモチーフに製作されている。

本作のアクションシーンは、北野武映画の中でも最高レベルであり、古典的な侍時代を取り巻いているロマンチックな観念を、ユーモアさとダークさを織り混ぜ、複数の感情を串刺しにするかのような試みからは、製作陣のスキルの高さ、映画に向ける並々ならぬ執念が感じとれる。

一方、北野武監督は今まで裏社会で渦巻く様々な人間模様を描いてきたが、それが時代劇となると物事が複雑になりすぎて、多くの人が死が無駄に描かれているといった印象も与える。それゆえに、エンドクレジットを見ても誰が何をしたのが思い出すのが困難な結果を招いている。

北野武は上映後に、会場で挨拶を求められ「ありがとう。今度はもうちょっといい映画で来ますので、よろしくお願いします」とコメントを残したようで、次回作への期待も高まる。『首』は、11月23日から日本で公開される。

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