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「“自分は死にません”って顔している人、多くないですか? 」暴力の痛さを描く傑作『青春墓場』奥田庸介監督独占インタビュー

text by 山田剛志

第22回東京フィルメックス コンペティション部門に日本映画で唯一選出された、奥田庸介監督最新作『青春墓場』が、7月8日(土)より公開される。今回は、6年ぶりの沈黙を破り、目の覚めるような作品をものにした奥田監督にインタビューを敢行。壮絶な制作過程から独自の演出や死生観について、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:山田剛志)

「とにかく映画が撮りたくて仕方がなかった」
制作資金をめぐる壮絶な裏話

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――昨夜、インタビューに備えて本作を観直したのですが、頭がエキサイトしてしまい、中々寝付けませんでした。この度はお話を伺えて光栄です。さて、『青春墓場』は奥田監督にとって6年ぶりの新作になります。企画の成り立ちから教えてください。

「この間、パンフレットの取材で企画の成り立ちについて話したら、それだけで40分かかっちゃったんですよ。だからインタビュアーの人には申し訳ないことしちゃって。なので、今回はなるべく簡潔に話すように心がけます。

シナリオ自体は前作(『ろくでなし』)が公開された2017年の時点ですでにありました。なかなか出資者が見つからなかったところ、ある芸能事務所から手が挙がって。

先方からは、当時売れていた某俳優を主演に立てるなら3000万円を出すと言われたのですが、自分の納得のいく映画にしたいと考えていた私は、自分でその役を演じるって言ったんですよ。そうしたら結局、1000万円しか資金が出ないことになって…」

―――想定していた予算の三分の一になってしまったのですね。

「はい。それから1年くらい動きがなかったんですけど、そうしたら、今度は株で2億円儲けたと自称する人として現れて、1500万円出すと言われたのです。

でもそこから株が暴落したり、プロデューサーが降りたりと紆余曲折ののち、製作費は600万になり…。結果的にレギュラースタッフは撮影、照明、録音、助監督、私の5名のみ。だからほぼ自主映画なんですよ」

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