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主役級キャストが繰り広げる芝居合戦
ハリウッドにも見劣りしない日本映画を牽引する役者たち

「リボルバー・リリー」
©︎2023リボルバーリリーフィルムパートナーズ

本作の見どころの1つは、主役級キャストが見せる芝居合戦だろう。ここでは物語とは別のベクトルで観る者を魅了する、俳優陣の活躍に注目してみよう。

まずは主演を務める綾瀬はるかについて。

綾瀬はるかといえば、本人の天真爛漫な愛されキャラクターが魅力で、様々なドラマや映画でも、そのポテンシャルを活かしたコケティッシュ(男ウケする)な役柄のイメージが強い。しかし、本作ではいつもの可愛らしい笑顔は封印して、新境地を開拓した。

役柄と役者の個性がマッチしていないと、演者のパブリックイメージが先行してしまい、観ていてうまく物語の中に入っていけないということがある。

先に述べた通り、綾瀬はるかが今回演じた小曽根百合は、綾瀬のタレントイメージと正反対のキャラクターだ。にも関わらず綾瀬は、落ち着いた大人の女性をなんの違和感もなく演じきっており、感銘を受けた。

アクション女優として成長を続ける綾瀬はるかの華麗な銃さばきや、男性と互角に闘うシーンも見ごたえあり。膝をついて転がり、すぐさま標的に銃口を向ける素早い身のこなしなど、随所でハリウッド映画にも見劣りしないアクションが炸裂している。

小曽根百合を助ける役割を担う男・岩見を演じた長谷川博己にも注目したい。

岩見は少々キザで女性にもモテる、頭脳明晰でスキのない男である。これは長谷川博己という俳優が持つ天性の才能なのだろうか。その一挙手一投足からあふれ出る気品によって、画がキュッと引き締まるような感覚を覚えた。

そして最後に、最もインパクトを残したと言っても過言ではない佐藤二朗にも触れたい。

彼が演じたのは、平岡組5代目組長。すり寄ってきたと思えばすぐさま掌を返す、かろうじて人間の皮を被った腹の中が真っ黒な男である。

優しく諭すように話していたかと思えば、突然怒鳴りだし、人をおちょくる態度といったら腹立たしいことこの上ない。だが、その不快なサマと悪意を発露させる演技が、緩急豊かに表現されており、映画を痛快に引っ掻き回してくれる。

さらに、本稿で触れてはいない役者陣も、とても良かった。今後、確実に日本の映画を引っ張っていくと思われる俳優たちの奮闘を観るためだけでも、本作には劇場に駆け付ける価値がある。

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