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「お互いの信頼関係が熟成して出た」
名優・藤竜也の役への向き合い方

©2023高野豆腐店の春製作委員会

―――本作で15年ぶりにじっくりと藤竜也さんをお撮りになったわけですが、時を経たことで関係性に変化はありましたか?

「僕の中では、藤さんを撮る喜びが15年経って熟成したというか、ワンカットワンカット、打ち震えるものがありましたね。今まで藤さんと2作品ご一緒させていただき、僕の想像ですけど、藤さんの中でも『こう演じれば三原は、ちゃんと見てくれるだろう』というお気持ちで、安心してお芝居に臨んでくださったのではないかな。

今回は、お互いの信頼関係が穏やかな形で熟成して出たと思っています。親戚との久しぶりの再会じゃないですけど、お互い要らない気を使わず、作品のことだけ考えて、とても良い関係性で仕事ができました。だから、事前にほとんど打ち合わせもしていませんし、映画に関して喋った事はほんの二言、三言ですかね。でもそれで十分なんですよ、藤さんとの仕事は」

―――先ほど、ロケハンに藤さんも同行されたと仰いました。主演俳優とロケハンをまわるというのは異例ですよね。とても贅沢ですね。

「ロケハンに藤さんが来てくれることがわかった時は、僕は藤さんのことを知っているから『そう来たか』と思ったんですけど、カメラマンとか助監督を含め、他のスタッフはやっぱりビックリしていましたね」

―――ロケハン時の印象的なエピソードがあれば教えてください。

「僕らロケハン時は、商店街とか路地裏とか山の方とか海とか一日中街を歩くので、歩数で言ったら2万歩以上になるのですが、藤さんは一生懸命、一緒に歩いてくれましたね。

最初の1時間はスタッフも『藤竜也だ!』と緊張していたんですけど、1時間過ぎるといつもと変わらない調子になって『予算無いな〜』とか、『ここ、エキストラ~人欲しいんだけど』など、リアルな話も結構していましたね」

―――藤さんも、ロケハンに同行することで、役づくりにおける示唆を得られたのかもしれませんね。

「街を歩きながら、豆腐屋の親父という役どころを探りたかったんでしょうね。僕らが歩きながら『この路地のこういう所に豆腐屋がありそうな気がする』とカメラマンに言っているのを聞きながら、『ああ、この路地の向こう側に俺の店があるんだなぁ』と想像されたりもされたのでしょうか。今回、演じてくださった役は“街で生きている人”なので」

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