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「生活の全てが勉強だった」映画『カムイのうた』主演・吉田美月喜、単独インタビュー。 女優としてのこれまでとこれから

text by 山田剛志

アイヌ民族の壮絶な歴史を描いた映画『カムイのうた』が1月26日(金)より公開される。今回は、「アイヌ神謡集」の著者として知られる知里幸惠(ちりゆきえ)をモデルに彼女の壮絶な生涯を描いた本作で主演を務めた女優の吉田美月喜さんのインタビューをお届け。映画にかける思いをたっぷり伺った。(取材・文:山田剛志)

「なんで私はこんなに大切なことを知らなかったのだろう」
オーディションの読み合わせで受けた衝撃

女優の吉田美喜月。写真:宮城夏子
女優の吉田美喜月写真宮城夏子

 

―――本作は、20世紀初頭の北海道を舞台に、先住民として独自の文化を築いてきたアイヌ民族が受けてきた差別、和人(大和民族)との軋轢を描いています。主演が決まった時、どのような思いでしたか?

「オーディションをして選んでいただいたのですが、決まった時は、とても嬉しく思いました。でもそれと同時に、それまでよく知らなかったアイヌ文化をテーマにしているということと、センシティブな内容も含まれているということもあって、強い責任感も生まれました」

―――オーディションの時点で脚本に目を通されていたのでしょうか?

「脚本を初めから終わりまで読ませていただくことはなかったのですが、オーディションでは、主人公・テルが妹みたいに可愛がっているモトという女の子に、『肩身の狭い思いまでして学校に行きたいの?』と声をかけるシーンをやらせてもらいました。

私はそれまでアイヌと言えば、アイヌ文様のことくらいしか知らなかったので、このシーンのセリフに衝撃を受けました。

20歳にも満たない女性の口からこんな言葉が出るくらい、アイヌ民族の方々は壮絶な差別を受けていた。“なんで私はこんなに大切なことを知らなかったのだろう”という気持ちになりました」

―――私もアイヌ民族が受けてきた差別について深くは知りませんでした。今回、リアルな映像と音響で再構成された歴史に触れて、衝撃を受ける方も多いのではないでしょうか。役が決まってからクランクインするまでの間、どのような準備をされましたか?

「今回の作品は本当に“準備が全てだった”って言えるくらい、やることが沢山ありました。アイヌ文化やモデルとなった知里幸惠さんについて理解を深めることに加え、着物の所作や着脱も自然にできるようになる必要がありました。

また、アイヌ民族の歴史を伝えるユーカㇻという叙事詩を覚えたり、ムックリ(口琴)の練習も欠かせませんでした」

―――入念に準備されたのですね。映画では手足からつま先まで、アイヌの女性を体現されていて、感銘を受けました。

「着物は毎日自分で着て、動画に記録して所作を確認しました。ムックリに関しては、新大久保にアイヌ料理屋さんがあって、そこに通って音の出し方を教えてもらったのですが、一筋縄ではいきませんでした。

ムックリは、曲や楽譜もない、自由度がすごく高い楽器。当時は、動物の鳴き声を真似したり、自然の音を模倣するようにして使われていたようです。

演奏の自由度が高い分、撮影時に自分の感情にピッタリな音を出すためには、予めいろんな音の引き出しを持っていなければいけません。音が鳴らせるようになってからは、自宅で毎日のように練習して、色んな音を探っていきました」

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