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圧巻の狂気っぷり
映画『月』で魅せた体当たりの演技

映画『月』
C2023月製作委員会

2023年、磯村は『東京リベンジャーズ2』にはじまり『最後まで行く』、『波紋』、『渇水』、『月』、『正欲』と骨太の話題作に立て続けに出演。特に『月』と『正欲』では難しい役どころを繊細に演じきり、助演として文字通り映画賞を総なめにした。

『月』で磯村が演じたのは、障がい者施設に勤務する青年・さとくん。森の奥深くにある施設では、職員から入所者に対する暴力が常態化。それを見て憤りを募らせていくさとくんは最後に衝撃的な行動に出てしまう。

実際に起きた事件がもとになっている作品ということもあり、その役作りが過酷を極めたことは想像に難くない。また、取り扱うテーマがテーマだけに、世の中から様々な意見が作品に向けられることも予想していたことだろう。

だが、そのすべてを背負って、磯村はさとくんを体現した。紙芝居を読み聞かせるなど真摯に仕事に取り組む姿勢から、徐々に狂気に支配されていくグラデーションは圧巻だった。

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