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「『エル・スール』と『ミツバチのささやき』を参考にして作った」
ビクトル・エリセ監督の影響について

© 2023“霧の淵”Nara International Film Festival
© 2023霧の淵Nara International Film Festival

―――本作では登場人物一人ひとりが心の内に秘密を抱えていますよね。画面のミステリアスな有り様も相まって、ビクトル・エリセ監督の初期作品を想起しました。

「実は今回、ビクトル・エリセ監督の『エル・スール』と『ミツバチのささやき』、この2本を参考にして作った側面があるんですよ。ご指摘いただき嬉しいです」

―――朝食のシーンは何度も描かれますが、カメラポジションを反復させておられます。それもあって、朝日館という建物が人物を見ている視線が強調されていると思いました。ある意味で建物が主役と言っても過言ではないと思うのですが、その点、村瀬監督がお考えになっていたことはありますか?

「そうですね。まず舞台となった旅館は、咲にとっては彼女を縛る檻のような側面もあって。彼女は劇中、多くのシーンで旅館の中にいますが、後半、イヒカと一緒に廃墟に出かけるシーンでは彼女の解放感が出ればいいなと思いました。

反復ということに関しては、ご指摘の朝食のシーンでは、全く同じカメラポジション、レンズで撮っています。それによって建物の視点というものがよく出たのかもしれません」

―――本作は昨年、スペインのサン・セバスティアン国際映画祭の新人監督部門に選出されました。現地の反響はいかがでしたか?

「スペインには古い建築物が沢山残っているのと、世代間が抱える問題に敏感であるからでしょうか、作品の世界観に共感したという声を多くいただきました。

実は昨年のサン・セバスティアン国際映画祭には、功労賞を受賞されたビクトル・エリセ監督がいらしていたんですよ。遠目からではありますが、憧れの監督と同じ場所に居合わせることができて嬉しかったですね」

―――エリセ監督の31年ぶりの長編新作『瞳をとじて』と同年に長編商業デビュー作を発表されるなんて、素晴らしい偶然ですね。本日はありがとうございました。

(取材・文:山田剛志)

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