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「見るたびに色々考えさせられる作品を目指したい」映画『あこがれの色彩』小島淳二監督インタビュー

text by 山田剛志

私の色は、混じりあえない…家族、大人の都合。絵を描く少女の心は、儚く揺れる、陶芸の街に生きるひとりの少女の純粋さと儚さを描く青春映画『あこがれの色彩』が公開中だ。今回は、メガホンをとった小島淳二監督のインタビューをお届け。作品にかける思いをたっぷりと伺った。(取材・文:山田剛志)

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【小島淳二監督プロフィール】

小林賢太郎さんとの映像製作ユニットNAMIKIBASHI(ナミキバシ)による「THE JAPANESE TRADITION〜日本の形〜」シリーズや、90年代頃よりメジャー企業のCMや注目のアーティストのMVを手掛け、資生堂・ツバキ、マキアージュシリーズほか<女性美の映像職人>とも呼ばれる。

「結衣にとって唯一絵を描くことだけが自分でいられる瞬間」物語の着想源は「娘の経験」

Ⓒ2022 teevee graphics,INC. all rights reserved.
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―――プレスリリースによると、小島監督がかつて美大受験のために美術学校に通っていらした時期の出来事が着想のきっかけになっているとのことですね。

「そうですね。ただ、僕もそういう経験があるんですけど、どちらかというと娘が経験したことが大きいんです。

彼女は、高校1年生の頃から美大受験に備えて美術の予備校に通っていたのですけど、割と早く始めたにもかかわらず、途中からすごく上手い子が入ってきて打ちのめされて帰ってくる、といったことがあって。また、そこでは、受験に合格するためにいかにして絵を描くかっていうことを凄く教え込まされるんですけど、自分が描きたいものと違うっていうことで凄く思い悩んでいて」

―――映画では、中島セナさん演じる結衣が講師から厳しい口調で「基本に忠実に描け」と言われますね。

「美術学校は技術を学ぶところですからね。ハイライトの横にちょっとだけ暗部を足すとより立体的になるとか。ガラスの表現では、どこにタッチを入れたら美しく見えるのかとか。そういったことを教わるみたいなんですよね」

―――小島監督も美大を目指していた過去があるとのことですが、今お話を伺っただけで、美術に精通していらっしゃるのがよく分かります。

「自分は元々、学校の美術の先生になろうと思っていたんですよ。それで大学に通っていたんですけど、ちょうどその頃世の中はバブル真っ盛り。当時は、クリエイターの活躍が目覚ましくて、それでご飯を食べている人たちが沢山いたんですよね。

そういう人たちのアシスタントを務めたりする中で、彼らが自由に表現している姿を見て、そっちの方が面白いなと思って。僕も映像でそういうことができないかなと思ったんですよね」

―――映像業界でのご経験は美樹のパートで鍵になってくるのではないかと思っているのですが、それは後ほど伺えればと思います。本作では「基本に忠実に描け」というメッセージを通して“規範から逸脱するな”というバイアスが描かれていると思いました。

「そうですね、そうしたことのメタファーとしても捉えられますね。結衣にとって唯一絵を描くことだけが自分でいられる瞬間で。本格的に学びたいと思って美術学校に通うんですけど、そこではアカデミックな手法ばかり教え込まれて、どうすれば彼女らしい表現になるのかをアドバイスしてくれるわけじゃないっていうことですよね」

―――1人1人の個性に合わせたものではなく規範を押し付けられることの息苦しさが描かれていたと思います。講師役の役者さんが、いわゆる悪役ではなく、ごく自然に「こういう人いるよね」という形で自然に演じていらっしゃったのが良かったです。中島セナさんがキャンパスに向き合う姿も沢山撮られていますが、中島さんご自身は絵を描かれていたご経験があるのでしょうか?

「そうですね。彼女は美術系の学校に通っている子で。知り合いが米津玄師さんのMVで中島さん起用していて、プロデューサーが知り合いだったんで色々聞いたら、『セナさんは実際に絵を描くんだよ』と教えてくれて。可能であればちゃんと絵を描いたことのある人にお願いしたいと思っていたのでピッタリでした」

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