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「それを知りギョッとした」日本人最低、外国人最高の話でない。映画『ジャパニーズスタイル』アベラヒデノブ監督インタビュー

text by 山田剛志
写真武馬怜子

2022年12月23日公開の映画『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』は、大晦日に運命的な出会いを果たした男女の魂のぶつかり合いを描く、疾走感あふれるロードムービーだ。この度、同作の監督・アベラヒデノブさんにインタビューを敢行。撮影期間およそ5日間という破格のスピードで制作された本作。現場のエピソードや作品に込められた思いをたっぷり伺った。(取材・文:山田剛志/映画チャンネル編集長)

【アベラヒデノブ監督 プロフィール】

写真武馬怜子

1989年にアメリカ・ニューヨークで生まれ、3歳の時に帰国。以降は関西で育つ。大阪芸術大学芸術学部映像学科を卒業後、監督・脚本・主演の三役を務めた、長編映画『死にたすぎるハダカ』で2012年モントリオール・ファンタジア映画祭⼊賞。2014年に発表した『めちゃくちゃなステップで』では、SSFF & ASIA 2014 UULAアワードグランプリを受賞。近年の監督作は、ドラマ「ムショぼけ」(北村有起哉主演。ABC/21)、「量産型リコ」(与田祐希主演。TX/22)など。また、俳優として、NHK連続テレビ⼩説「おかえりモネ」(⽊村慎⼀役)に出演するなど、活躍の幅を広げている。

すべては主演・吉村界人の一言から始まった
映画『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』誕生秘話

―――インタビューをさせていただくにあたり、映画『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』を拝見したのですが、疾走感みなぎる作品で、あれよあれよという間に引き込まれました。企画の成り立ちから教えていただけないでしょうか。
「主演を務めた俳優の吉村界人君から『映画を撮りたいんだけど』と声をかけられたのがきっかけでした。2019年2月に僕の監督作(『想像だけで素晴らしいんだ -GO TO THE FUTURE-』)が公開されたのですが、その時に会って、『なんかやろうぜ』と」

―――アベラ監督は吉村さんと役者として共演した経験があるそうですね。
「そうなんです。界人の心に火が付いたときのお芝居が大好きだったんです。彼の出演作は軒並みチェックしているんですけど、僕も意地が悪いので、『今回はあんまりスイッチ入ってないな』なんて思うことも少なからずあったりして。僕の作品に出てもらう分には、彼のベストを引き出したいという思いがありました」

写真武馬怜子

―――切羽詰まった表情と破れかぶれなアクションが素晴らしかったです。
「ありがとうございます。詳細は言えないのですが、当時、彼は色々悩みを抱えていて、ちょっとした人生の岐路に立たされていたんです。映画制作は、企画が立ち上がって撮影に入るまで一定の準備期間を設けるのが通常ですが、界人君が提示した条件は、『2019年中に撮る』ということでした。界人の切羽詰まった気持ちに呼応する形で、僕と10年来の仲である女優の武田梨奈さん、プロデューサーの雨無麻友子さん、大阪芸大時代からの付き合いである脚本の敦賀零が参加し、5人で企画を練っていきました」

―――本作は、タイトルが示唆しているように、日本人の精神性がテーマの一つとなっています。どのような経緯でこうした主題が生まれたのでしょうか。
「僕は、アメリカ合衆国で生まれて3歳で帰国したんですよ。もしそのままアメリカ人として現地で暮らしていたら、当たり前のように英語を話して、考え方ももっとポジティブで、人間関係の面でも、自分を出すってことが、自然にできる人間になっていたのかもしれない。日本は同調圧力が強く、人と違うことをしたら白い眼で見られる風潮がありますから。アメリカで育っていたら、もっと生きやすかったんじゃないかとか、そういった思いは昔から抱いていたテーマだったんですよね」

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