筋金入りの『相棒』オタクを唸らせた、映画『帰ってきた あぶない刑事』の特別な魅力とは? 刑事モノの二大巨頭を比較&考察
舘ひろし&柴田恭兵主演。スタートから約35年以上経つ、超人気刑事ドラマシリーズの8年振りの劇場作品『帰ってきた あぶない刑事』が公開中だ。今回は、土屋太鳳がヒロインとして出演した本作を、『相棒』をこよなく愛するライターが両作の比較を交えて考察。稀有な魅力に迫る。(文・Naoki)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】
※このレビューでは映画のクライマックスについて言及があります。未見の方ご注意ください。
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【著者プロフィール:Naoki】
1995年、福岡生まれ埼玉育ち。配信業界に勤めるサラリーマン。前職ではTVやアニメ業界でのエージェント業務を行う。『相棒』をこよなく愛し、10年以上全力で追いかけるオタク。”作品を知らない人には分かりやすく、知ってる人にはより楽しい記事”を信条としている。
“あぶデカ初心者”でも心から楽しめる快作
2024年5月24日、『あぶない刑事』ことタカ&ユージが横浜に帰ってきた。
帰ってきたと言いながら、私自身は『相棒』はかなり観ているものの『あぶない刑事』に関しては今回の劇場版で初めて鑑賞した。そして過去作の予習もしていない新参者である。
今回はそんな『相棒』ファンかつ『あぶない刑事』新参者の視点から両作品の違いや魅力を伝えたいと思う。
まず結論から言うと、心底面白かった。
銃撃やアクションがメインかと想像していたが、タカとユージの会話劇が最高だった。ダンディでセクシーでオシャレで粋。世の男が憧れる全ての要素を備えた2人の言葉選びは流石の一言である。
また演じる舘ひろしと柴田恭兵も危険な場面でも軽口を叩き、積み重ねた熟年の間、表情、動き、オーラの賜物なのか、老いを気にするセリフが端々にあったものの、観る者に年齢をまったく感じさせない。この2人が主演を務めているからこそ『あぶない刑事』はここまで愛される作品になったのだと理解した。
タカ、ユージそれぞれの事件との因縁、解決に向ける思いが十全に描き込まれた物語の構成が素晴らしい。
とはいえ、最大の見せ場はやはりアクションと銃撃戦だ。
年齢は感じさせないとは言え、タカとユージは初期設定を加味すると60代後半で演者は70代を越えている。
しかしその中でもアクションでは現役警官よりも優れた銃の技術を見せつけたり、腕時計をメリケンサック代わりにして腕力不足を補うなど、実践経験に裏打ちされた老獪な手段で困難を乗り越えていく。
クライマックスには、タカがハーレーに乗りながら手離し走行でショットガンを撃つという最高の見せ場もある。
また、タカ&ユージだけでなく透(仲村トオル)や薫(浅野温子)、瞳(長谷部香苗)など過去作から登場していた面々も魅力的であった。
特にタカ&ユージの後輩である透は警察官としての矜持を見せたり、薫はコメディパートを全て引き受けて劇場の笑いを取ったりと活躍をあげるとキリがない。
更に要所で映し出される過去作の映像を観るにつけ、新参者の自分ですら感慨深い気持ちになった。
これが長年追っていたファンであれば感動はひとしおであろう。長年のファンは当然だが自身のような新参者にも胸を張ってお勧めできる作品であった。
次のページからは、『相棒』との比較を交えつつ、“あぶデカ”の特別な魅力を紐解いていこうと思う。