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さまざまなテーマをシニカルに描く天才・浅野いにお

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』
©浅野いにお小学館DeDeDeDe Committee

前章と後章を振り返って、「デデデデ」はとても複雑なテーマをはらんだ、素晴らしい作品だと思った。

「SF」というジャンル「人類滅亡」という設定において、「右翼と左翼」「原住民と侵略者」という二項対立、「SNS」「LGBTQ」といったアクチュアルなテーマを盛り込んでいる。その中で、「門出や凰蘭たちの友情・恋」というささやかな物語が丁寧に紡がれる。

こうした道具立てを用いて、物語をシニカルに見せるのが浅野節だ。例えば侵略者のフォルムはあまりに可愛らしすぎて恐れることが難しい。二足歩行の小さくてか弱いキャラクターであり、最後の最後を除いて人間に危害を加えない。

そんな中、侵略者擁護派が社会運動を起こすが、これもどこか皮肉っぽく描かれる。そんなマクロな運動が壮大なスケールで描かれる一方、「FPSゲームで遊んでるほうが楽しい」という門出と凰蘭の等身大の感覚も見事にすくい取っている。

作中には女装癖を持つマコトというキャラクターが登場するが、彼のジェンダーに関して周りはまったく気にすることはせず、あっという間に打ち解ける。「意外とみんな気にしてないよ」という軽妙さが良い。

こうしたさまざまなテーマをシニカルに描けるのが、浅野いにおという天才なのである。「SNS構文を使う人」「ソシャゲ課金にハマる人」「堕落した反知性主義の大学生」「テレビで偉そうに語るコメンテーター」などをいじりつつ、社会を別の角度から見る視線を鍛えてくれる。

浅野作品に触れた後、まるで自分が主人公かの如く、街中の人々を斜に構えて見てしまうことがある。もちろんそれが過剰になるとよくないが、ほんのちょっとであっても作品の力で世界の見え方を変えてくれるなんて、素晴らしいことではないだろうか。

さて、劇場アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』は、前章・後章ともに、浅野節を存分に感じられる仕上がりだ。原作が好きな方はもちろん、まだ読んだことがない方でも楽しめるので、まだの方は是非スクリーンで見ていただきたい。

(文・ジュウ・ショ)

【作品概要】

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
前章:3/22(金) 後章:5/24(金)全国ロードショー
■キャスト
幾田りら  あの
種﨑敦美 島袋美由利 大木咲絵子 和氣あず未 白石涼子
入野自由 内山昂輝  坂泰斗 諏訪部順一 津田健次郎
■スタッフ
アニメーションディレクター:黒川智之 脚本:吉田玲子 世界設定:鈴木貴昭
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高 色彩設計:竹澤聡 美術監督:西村美香
CGディレクター:稲見叡 撮影監督:師岡拓磨 編集:黒澤雅之
音響監督:高寺たけし 音楽:梅林太郎 アニメーション制作:Production +h.

原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
主題歌:前章「絶絶絶絶対聖域(ぜぜぜぜったいせいいき)」 ano feat. 幾田りら|後章:「青春謳歌(せいしゅんおうか)」 幾田りら feat. ano
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