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『呪術廻戦』史上最も残酷な話を映像化…ファン垂涎の仕掛けとは? 『渋谷事変 セレクションイベント上映』考察&評価レビュー

text by ZAKKY

五条悟と夏油傑の高専時代の物語から、夏油傑が決行した「渋谷事変」を描くアニメ第2期「懐玉・玉折/渋谷事変」、「渋谷事変」のブルーレイ&DVD第4、5巻の発売を記念して、計4話のエピソードを1週間限定上映された。今回は、ネタバレ有りで解説していく。(文・ZAKKY)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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『呪術廻戦』とは

『呪術廻戦』とは、芥見下々作による『週刊少年ジャンプ』にて2018年から連載中の超人気漫画。人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描き、既刊25巻にしてシリーズ累計発行部数は驚異の8,000万部を突破している。

未曾有の呪術テロ「渋谷事変」

©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
©芥見下々集英社呪術廻戦製作委員会

今作は、現在も連載が続く『呪術廻戦』で最も人気が高く、ドラマチックなエピソードが満載の「渋谷事変編」。

「渋谷事変」とは、作中における2018年10月31日に発生した呪術によるテロであり、首謀者はかつて呪術高専を追放された特級呪詛師・夏油傑、特級呪霊、加担する呪詛師たち。

東京都渋谷に半径約400mの帳が複数下ろされ、多数の一般人が閉じ込められた報を受け、呪術高専の呪術師たちが、立ち向かう。

そんな、「渋谷事変編」の佳境である、第41話「霹靂-弐-」、第42話「理非」、第43話「理非-弐-」、第44話「理非-参-」の計4話を映画化したわけだが、ただ単にブルーレイ&DVD版の発売を記念してという理由だけではなく、非常に意義のある映画版であると言える。

まず、第41話は、虎杖の同級生である都立呪術高専1年生で、2級呪術師・伏黒恵が、呪詛師・重面春太により、手負いの状態にされた場面から始まる。

術式により式神を呼び出し、応戦。狼狽える重面。そこに「呪いの王」と称される特級呪物であり、虎杖に受肉する形で人格を乗っ取った状態の「宿儺(すくな)」が現れ、式神との対決となる。

そのバトルにより、渋谷の街は破壊され、多くの人々が死亡。宿儺から本来の人格へと戻った虎杖は 、無関係の人々を殺してしまった事実に絶望する。まずは、このプロローグを押さえておこう。

そして、注目すべきこの映画の核となるエピソードが、二話続く。『呪術廻戦』のストーリー全体における、最も残酷で悲しい展開としてファンたちを驚愕させたくだりである。

第42話では、人気キャラクターである1級呪術師・七海建人が、人間への恐れから生まれた未登録の特級呪霊の1人である、真人に惨殺されてしまうのだ。

瀕死状態の七海は、渋谷の地下道を呪霊たちをなぎ倒しながら歩く中、浜辺で海の風を浴びる自身の姿を心の中でイメージした。

「マレーシアの、何でもない海辺に家を建てよう…」と、平和な暮らしを妄想する七海。「疲れた、もう充分やった…」と、自身に言い聞かせながら。

ここで、着目したいのは、死の間際に七海が思ったことは、先を見据えた願望であること。過去の走馬灯ではなく、まだ、生きられるという未来予想図なのだ。

不愛想だが、その実、情に熱く優しい七海の内面を最後の最後で表わしており、それだけに上半身を吹き飛ばされるという何とも痛ましい死に様は、目を覆いたくなる。虎杖への「後は頼みます」とのラストメッセージを聞いた日には、涙腺決壊なのである。

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