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歌よりも重要なものとは? アイナ・ジ・エンドの”身体”に注目…映画『キリエのうた』徹底考察&評価。忖度なしレビュー

奇跡の歌声をもつアイナ・ジ・エンドの才能に惚れ込んだ、岩井俊二監督と小林武史のタッグによる破格の音楽映画『キリエのうた』が公開中だ。今回は、岩井俊二の過去作やアイナの歌唱シーンを踏まえて、本作の魅力を解説していく。(文・タナカシカ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

キリエの歌がつなぐ4人の物語

(C)2023 Kyrie Film Band
C2023 Kyrie Film Band

本作には4人の主人公がいる。過去のトラウマから、歌うことでしか声を出せないキリエ(アイナ・ジ・エンド)。過去と名前を捨て自由に世界を旅するキリエのマネージャーを買って出た謎の女性イッコ(広瀬すず)。姿を消した婚約者を探し続ける夏彦(松村北斗)。傷ついた子どもたちに寄り添う教師フミ(黒木華)。

“4人の運命”という謳い文句の今作だが、夏彦とフミのエピソードよりも、世界から孤立しているキリエとイッコの物語の強度が際立っている。本レビューでは、主にこの二人の物語をひも解いていこう。

東京でひとり、路上ライブを行いながらホームレス生活をしているキリエのもとに「ねえ、一曲弾いてくれない?」と奇抜な髪をした女性が歩み寄る。その女性はキリエの高校時代の同級生であり、唯一の友達だった真織里だった。

彼女は過去と名前を捨て、現在はイッコという名前でその日暮らしをしていた。キリエも路花という名前を変え、姉の名前であるキリエと名乗って生きていたため、2人の仲は再び急接近した。

学生時代からキリエの歌声を知っていたイッコは、キリエのマネージャーに立候補し、右も左もわからなかったキリエをプロデュースするのだ。

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