ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 世界の見え方が変わる? 春画と映画の運命を重ねる…異色の性愛コメディ『春画先生』徹底考察。忖度なしガチレビュー » Page 4

「政治的正しさ」と「表現の自由」

(C)2023「春画先生」製作委員会
C2023春画先生製作委員会

かつて明治期に春画の屈託のなさが次第に受け入れられなくなっていったように、本作を観る一部の観客にとっては、劇中で展開される奔放すぎる行為や関係性の一部は、もはや映画という虚構内の行為としても許容しがたいものとなっているかもしれない。

だが塩田は、あえて2023年現在の基準に抵触するような描写をも交えることで、そうした観客の感覚に揺さぶりをかけようとする。

西洋由来ですっかり国内にも定着した「政治的正しさ」の発想が、特に性描写と関わる「表現の自由」に加える制限は、映画に、そして画面に「なにを見ようとする」のかに関わる観客の志向や倫理観をも密かに規定する。

なにかを「見るべきではない」ものであると命ずる権力や時代精神の気味の悪さに注意を払い続けるためにこそ、われわれ観客は、さりげなく映画のフレーム内に「見える」ものとして配置された隅田川に目を凝らし続けなければならないだろう。

(文・冨塚亮平)

内野聖陽 北香那 柄本佑 白川和子 安達祐実
原作・監督・脚本:塩田明彦
製作:中西一雄 小林敏之 小西啓介
プロデューサー:小室直子 共同プロデューサー:関口周平 ラインプロデューサー:松田広子
音楽:ゲイリー芦屋 撮影:芦澤明子(JSC) 照明:永田英則 録音:郡弘道 美術:安宅紀史
装飾:山本直輝 スクリプター:柳沼由加里 衣裳デザイン:小川久美子 衣裳:白井恵
ヘアメイク:齋藤美幸 編集:佐藤崇 サウンドエディター:伊東晃
VFX プロデューサー:浅野秀二 VFX ディレクター:横石淳
助監督:久保朝洋 制作担当:宮森隆介 宣伝プロデューサー:大﨑かれん
製作:『春画先生』製作委員会(カルチュア・エンタテインメント、TC エンタテインメント、ハピネットファントム・スタジオ)
企画・製作幹事:カルチュア・エンタテインメント 制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2023/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/114 分 <R15+>
©2023「春画先生」製作委員会
公式HP
[※ご注意※]
本作には、無修正の春画がでてきますこと、ご留意の上、ご鑑賞ください。

1 2 3 4 5