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ハッピーエンドとは言い難いラスト…映画版ならではの魅力とは? 『52ヘルツのクジラたち』考察&評価。忖度なしガチレビュー

text by 寺島武志

2021年に本屋大賞を受賞した、町田そのこによる原作を、名匠・成島出がメガホンを取った本作。「ムシ」と呼ばれる少年との出会いを通し、自分の過去の傷と向き合う主人公・貴瑚を杉咲花が熱演した。今回は、主人公を襲う悲劇や、タイトルがもたらす意味を解説する。(文・寺島武志)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>

神秘的なタイトルに隠された重厚なストーリー

©2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会
©202452ヘルツのクジラたち製作委員会

本作は、町田そのこによる初の長編小説にして、2021年の本屋大賞に輝いた「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)を成島出監督のメガホンで映画化した作品だ。

まずは、そのタイトルにある、“52ヘルツのクジラ”。世界唯一の種ともいわれ、一般的な種とは違う高周波数で鳴くため、その存在を認識されないまま生きることを余儀なくされ、「世界でもっとも孤独なクジラ」といわれている。

その神秘的な例えをタイトルに採用しているように、孤独な主人公、そして、そんな主人公に拾われた孤独な少年との出会いを中心に、介護や虐待、毒親によるDV、ジェンダー問題をも盛り込んだ、重厚なストーリーだ。

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