“恐怖”が根底にあるキャラクターへの役作り
―――杉田さんが演じられた敬太は、司(平井亜門)に、「たまに何考えてるかわからないときがあって…」と言われ、怖いのか、悲しいのか、感情が見えないキャラクターだと思いました。“行方不明の弟”を持つ兄・敬太という役はどのように作り上げましたか?
近藤監督「杉田さんには、“恐怖”が敬太の根幹にあるということを最初にお話ししました。例えば、弟が失踪するような出来事があることがあれば、その後の人生で恐怖心がゼロになる瞬間は多分ない。その恐怖を10段階で表すなら、普段の何でもない日常を“1”として、クライマックスの恐怖を“10”にするイメージで調整していこうとお話しました」
杉田「敬太は、弟がいなくなったことで、何かが欠けているという感覚が常にあるんだろうな、と感じていました。弟の失踪のことがずっと引っかかっているイメージを抱きながら演じました」
近藤監督「本作の後半、山へ行くあたりのシーンでは、杉田君から『この時の敬太って、取り憑かれているように演じた方がいいですか?』という質問をされたのを覚えています。少し答えに悩んだんですが、『違います』と答えたと思います。一見すると、不合理に見える行動でも、本人の強い意志のもとに行われているんだっていうことを自分なりに探して、それが伝わるように役を作るのが大変だったんじゃないかと思います」