実家が持つ象徴的な意味

杉田雷麟、近藤亮太監督、写真:wakaco
杉田雷麟、近藤亮太監督、写真:wakaco

―――母親がいる実家にビデオテープを返しに行くシーンでは、実家であるにも関わらず、母親を探すことだけを考えているように感じました。上着を脱いでから母親を探し始めるのが自然だと思いますが、そのような行動はなく、結果として異様な緊張感が生まれていました。杉田さんは後半の展開を意識して、演じられたのでしょうか?

杉田「実家に対しては、良いイメージがない印象でした。過去回想のシーンで、弟がいないのに誕生日会を続けていましたが、弟の失踪をなかったかのように振る舞う家族に、嫌悪感のようなものがあったのではないかと思います。

ただ、“実家”だけど、『ただいま』とは言わないし、上着も脱がない。その点について、言われるまで深く意識していなかったですが、改めて振り返ると確かにそうですね。敬太にとって『安心できる場所、好きな場所じゃないんだな』と思いますね。監督、どうですか?」

近藤監督「まさにそういうことです。敬太にとっては逃げ続ける場所で、形式上実家に帰っているだけであって、自分の居場所だと思って行ってないんだろうと考えています。だから、『ただいま』もなければ、落ち着こうとする行動は絶対にしない。敬太の人生を考えて、彼が無意識に考えていることが観る人に伝わるように動きをつけました」

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!