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「役を演じるということはクリエイト」オムニバス映画『almost people』石井岳龍監督、主演・柳英里紗インタビュー

text by 山田剛志

横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄がメガホンをとり、感情の一部が欠けている4人 のきょうだいを描く映画 『almost people』が9月30 日(土)より公開。今回は第二話『長女の話』のメガホンをとった石井監督と主演を務めた柳英里紗さんのインタビューをお届け。作品の深部に迫るお話を伺った。(取材・文:山田剛志)

「青春時代の私に教えてあげたい」
石井岳龍×柳英里紗、相思相愛な2人のコラボ

写真:宮城夏子
左から石井岳龍監督俳優の柳英里紗 写真宮城夏子

―――映画『almost people』、とても面白かったです。4本それぞれ見応えがありましたが、中でも、石井監督がメガホンをとり、柳さんが主演された「長女の話」は良い意味で引っ掛かる細部が無数にあって、豊かな映画だと思いました。本日はお話を伺えて光栄です。

さて、石井監督と柳さんは、昨年石井監督がお撮りになったミュージックビデオで初タッグを組まれております。当時、石井監督は、SNSで「長年仕事のチャンスを待っていました」と投稿されていますが、柳英里紗さんという役者を発見されたきっかけは何でしたか?

石井岳龍(以下、石井)「衝撃を受けたきっかけは、中野量太監督の『チチを撮りに』(2012)でした。実はその前に『天然コケッコー』(2007)とかも観ていたんだけど、その時はごめんなさい、あまり印象には残ってなくて。『チチを撮りに』にビックリして。それ以降、注目していました」

―――柳さんのどの部分に目を惹かれましたか?

石井「リアルさと浮遊感が独特にブレンドされた存在感ですね。『何なんだろう、この人?』っていう」

柳英里紗(以下、柳)「これ、恥ずかしいですね(笑)」

―――柳さんは件のミュージックビデオで石井監督と初顔合わせになるわけですが、お話が来た時にどのように思いましたか?

柳「うーん…言葉として表すと『うわー』っていう感じです(笑)。映画への憧れが強かった青春時代の私に時を戻して教えてあげたいと思いました。その時の自分が知ったら鼻血出して倒れると思う(笑)」

石井「高校生の時ですよね」

柳「そうですね。『狂い咲きサンダーロード』(1980)が最初だったかなぁ。当時観て『すっげぇー』って思って。あんなの高校生の体に注入したら頭おかしくなるだろう、っていう。そのくらい影響受けました」

石井「珍しいですね。女子高生からは大概、嫌われる類いの作品だと思うんですけど」

柳「衝撃でした。そういったこともあり、石井監督への憧れが強くて、役者として向き合わなきゃいけないのに、高揚感に気持ちが持っていかれてしまい、自分の仕事を忘れてしまわないか心配になりました。『出来るだけ冷静に仕事をしなければ』っていうのが、最初に思ったことですね」

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