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「役者の肝は想像力」映画『GREEN GRASS~生まれかわる命~』俳優・西岡德馬、インタビュー。役作りや死生観を語る

text by ZAKKY

日本とチリの修好120周年記念事業として製作された映画『GREEN GRASS~生まれかわる命~』。震災で亡くなるも、死を受け入れられない主人公の誠と、息子を失った父親・清の2つの目線で描かれた本作。今回は、清役を務めた西岡德馬さんのインタビューをお届け。じっくりと作品に込めた想いをお聞きした。(取材・文:ZAKKY)

「『会わなかった時間』と『もう会えない時間』は違う」
役作りについて

映画『GREEN GRASS~生まれかわる命~』©2022「グリーングラス」上映実行委員会
映画GREEN GRASS~生まれかわる命~©2022グリーングラス上映実行委員会

―――第一印象は、現実と死後の世界が別々に描かれていることを飲み込めるまでに少し時間がかかりました。しかし、理解してからは、自然と涙がこぼれてしまって…

「ありがとうございます。嬉しいですね」

―――役作りに関して、意識したことはございますか?

「役作りと言うよりかは、自分が清の立場だったら、どう思うか?ということを考えました。僕は、子供が3人いるんですけど、もし、自分の子供と、例えば、疎遠になっていた場合にね。どこかで、元気で生きていてくれればいいなって思うだろうし、会いたいなって思うんだろうしね。

人間、家族に限らず誰かと疎遠になると『まあ、いつか会える』と思っていながら、時が過ぎるものだと思うんです。でも、予期せぬ訃報は突然に舞い込むものだったりします」

―――それが、自分の子供だと思うと、想像を絶しますね…

「そうですね。この作品のように、津波に巻き込まれてしまったかもしれないなんて事態でしたら、なおさらです。息子の遺品を整理していたら、自分とのよき時代の思い出の写真が出てきた際に、息子も会いたかったのかもしれないなと、その時になって気付く。

なんで俺がもっと会ってやらなかったんだろう、どうしてもっとあいつを愛してやらなかったんだろうっていう想いが募って、彼が訪れたのではないかと思う土地を、清は巡るわけです」

―――演じていて、お辛くはなかったですか?

「もちろん辛い気持ちもあったけど、そこは、役者だからね。それ以上の想像力を働かせようと常に思っています。例えば、もし生きていれば、どこかでちょっと1杯飲んでいればよかっただろうなとか。

でも、もうそれもできないのか…などとね。『会わなかった時間』と『もう会えない時間』っていうのは、違うわけなんだなということを考えながら演じていましたね」

―――清が何を思ってあの土地を巡っていた心中は、西岡さんの中ではそういうことだったのですね。

「くどいようだけど、役者の肝ってのは、想像力だからね。経験したこともないことを演じるわけですから。

例えば、俺は殺人を犯したことないけど、人殺す役もあるわけでね。全て想像力ですよ。そこがないと、脚本どおりにとか、監督に言われたとおりにやっていても、しょうがない。特に今作の清のようなセリフの少ない役柄の場合、その心中を自分で演技プランを立てないといけない」

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