観る者を魅了するロズの造形
物語は、人の手助けを目的に作られた最新ロボット(ロッザム7134。通称「ロズ」。吹替:綾瀬はるか)が、嵐で無人島に漂着してしまったところから始まる。偶然起動スイッチが入った“それ”は、当初は野生動物たちに「化け物」と恐れられた。しかし、過失で壊してしまったガンの巣にひとつだけ残っていた卵を育て、動物たちと交流するうち、しだいに「心」が芽生えていく。
ロボットが心を得る話は数あれど、本作はその類型に堕さない。というのも、『野生の島のロズ』では、タイトルどおり容赦のない「野生」が描き出されているのだ。
動物たちは会話可能な相手同士でも食う・食われるの関係で、子どもが外敵に襲われた親も次の瞬間には切り替えている。そうしなければ生きていけない、それが当然、といった風情だが、そんな自然の“プログラム”を、同じく人造のプログラムによって動くはずのロボット・ロズの行動がしだいに変え、影響を及ぼしていく。
ちなみに、ロズの造形はさりげなくかわいらしい。たとえば、起動したてのころ島について学習するために身動きを止めて膝を抱える姿や、ガンの子ども・キラリ(吹替:鈴木福、濱﨑司)を目のようなカメラで興味深げにフォーカスする姿は出色だ。
「どうだ、かわいいだろう」といったねばつきがないのもいい。これによって、観る者はかえってロズの一挙手一投足に注目し、ロズが新たに得た感情や周囲との関わりによって彩られていく世界を、一緒に体験しているかのような気持ちになれる。