社会の分断が進む今こそ観たい1本

Ⓒ2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.
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 ロズとキラリの脇を固める動物たちも個性的だ。特に印象に残ったのは、オポッサムの母親ピンクシッポ(吹替:いとうまい子)と、カオジロガンのクビナガ(吹替:千葉繫)である。ピンクシッポは、初めての育児に戸惑うロズに、やさしく厳しく、的確な助言をする。クビナガは、とにかく渋かっこいい。渡り鳥のリーダーを務める最年長者で、仲間外れにされていたキラリをいち早く認め、大きく成長させた。

 彼らの助けを得て、鳥かつ子どもという未知の存在を育てあげるロズ。ついにキラリが“渡り”をすることになり、自身は飛べない・ついていけないとわかっていながらも、応援するかのように鳥たちの間を両手を広げて走る様は、感涙必死の名場面である。

 また、本作の特徴としては、様々なはみだし者に救いがあることも挙げられる。ロズとキラリはもちろん、ずる賢いアカギツネのチャッカリ(吹替:柄本佑)、内向的に木をかじり続けるビーバーのパドラー(吹替:山本高広)など、周囲から爪弾きにされていたキャラクターが、のちに大きな役割を果たす。

 そして、ロズや仲間たちとともに、これまで仕方がないと放置されていたこと、すなわち世の“プログラム”を超えたとき、観客にはあたたかな希望がもたらされる。社会の分断が指摘され、殺伐とした話題が尽きない現代だからこそ、生まれるべくして生まれた新たな名作である。

(文・近藤仁美)

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