ショットの反復とキーラン・カルキンの表情の素晴らしさ
また、本作では、ツアー客や従兄弟2人が歩いている様子を、真横から撮った印象的なショットが何度か反復されるが、参加者たちは、同じ向きながらもバラバラに歩き横並びになることはない。これは同じ方向を見ながらも、それぞれ異なる想いを抱く人々を映しているように思える。
この映画は、空港のロビーに座るベンジーを正面から捉えた、冒頭と同様のショットが繰り返されて終わる。オープニングでは曖昧だったが、旅の様子と感情の移り変わりを追ってきた観客は、最後のベンジーの顔からいくつもの意味を読み取れるようになっているはずだ。しかし、その内容は人によって違ってくるはず。前向きに捉える人もいれば、深刻な状態にあると感じる人もいるだろう。この場面含め、他者の痛みの複雑さを表現したキーラン・カルキンは素晴らしい。そして、その表情を見るたびに、我々はまた痛みについての問いへと向き合うことになるのだ。
(文・島晃一)
【作品情報】
原題:A REAL PAIN
監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ
キーラン・カルキン
ウィル・シャープ
ジェニファー・グレイ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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映倫:PG12
北米公開:2024年11月1日
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