暖かみのある絵画的表現に驚く
本作でまず特筆すべきは、その映像表現だろう。プロダクションノートでサンダース監督は、「印象派的なディティールを強調し」、「バンビ(1942)のようなディズニー初期の名作の動物描写や、宮﨑駿監督の諸作品の雰囲気のある森からインスピレーションを」受けたというが、CGアニメーションながらも暖かみのある美しい絵画的表現に驚かされるばかりだ。
とりわけ冒頭、ロズが木に触れるとともに蝶たちがいっせいに羽ばたき、それを見上げるシーンは、思わずため息が出るほど美しい。赤、黄色、オレンジといった暖色に彩られた自然に触れ、世界が一気に開かれた感覚を覚えるこの場面は、ロズにとっての新しい出会いを告げるかのようでもある。
ひなどりを育てるという物語上、ロズが飛び立つものを見上げる動作は、劇中何回か繰り返される。試行錯誤しながら子育てをしていくうちに、ロズにはプログラムを超えた親心のようなものが浮かび上がるのだが、それゆえ、同じく見上げる動作であっても、冒頭と後半では違った感動がある。