ジャッキー・チェンとテクノロジーの融合

　AIジャッキーには最後まで慣れなかったが、歴史パートはドラマティックに盛り上がり、クライマックスは現代パート。遺跡発掘の探検アドベンチャーを経てお宝に辿り着くと、ようやくジャッキー御大による小気味よいアクションが展開する。

　スタントダブルを使おうが、早回しだろうが、やはり生身のジャッキーアクションはたまらない。現代のアクション界には、若くて身体能力のある俳優がたくさんいるが、この味はジャッキーにしか出せない。ジャッキー・チェンというアクション俳優が、唯一無二の無形文化財であることが改めて理解できる。

　それだけにAIジャッキーという表現方法は、アリなのか。いつまでもスターを求めるファン、それに応えようとする制作陣。リアルとフェイク。テクノロジーの追求と功罪。俳優が俳優である意味…。映画の本筋とは別に、哲学的なテーマが浮かんでくる。

　禁断のAIジャッキーは、かつてのキッズたちだけでなく、あらゆる映画ファンにとっての「踏み絵」だ。これが過渡期の産物なのか、単なる黒歴史となるのか。いまこそ映画館でその衝撃を体感しておくべきだろう。

（文・灸 怜太）