映画『A LEGEND 伝説』考察＆評価レビュー。禁断の”ジャッキー若返り作戦”はアリ？ナシ？【ネタバレ】

2024年に公開された映画『ライド・オン』に続く“ジャッキー50周年記念プロジェクト第2弾”となる、映画『A LEGEND 伝説』が公開中。今回は、2000年年の時を越えて繰り広げられる壮大な冒険の数々と不滅の愛を描いた本作のレビューをお届けする。（文・灸 怜太）【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 ------------------------------ 年を重ねても色あせないアクション界のレジェンド © 2024 Bona Entertainment Company Limited 映画界には、アクションでもコメディでもなく「ジャッキー映画」というジャンルがある。 独創的なアクションと命がけのスタント。しょうもないギャグ。そのすべてから溢れ出るサービス精神。身も心も映画に捧げるジャッキー・チェンの姿に感銘を受けたキッズたちは、「一生ジャッキー映画を見続ける」と誓い、いまも新作が封切りされれば、初日に駆けつける。 筆者も、そんなジャッキーチルドレンのひとりとして、「初日ジャッキー」を当たり前のようにキメてきた。客席を見回すと、同世代と思われる、白髪混じりの元キッズばかり。それでも劇場内には独特の熱気が漂い、あの頃の空気を懐かしむように上映がはじまった。 【次ページ】 かつての香港映画を彷彿とさせる要素 かつての香港映画を彷彿とさせる要素 © 2024 Bona Entertainment Company Limited まさにレジェンドなジャッキー・チェンは御年71才。さすがに動きは衰えてきており、ここ数年は主演作でも周りに若くて活きのいい俳優を配し、一歩下がったような役回りを請け負うことが増えてきた。 本作でも韓国のボーイズグループ「EXO」のメンバーでもあるチャン・イーシンなど、アジア圏のイケメン俳優をラインナップ。ジャッキーは考古学者のファン教授を演じているが、これは過去作の『THE MYTH/神話』（2006）、『カンフーヨガ』（2017）でも演じていたキャラクター。とはいえ、本作とはシリーズものとして話が繋がっているわけではないようで、その適当な感じが、かつての香港映画のテイストを彷彿とさせる。 この考古学者ファン教授と愉快な仲間たちが、ドタバタと遺跡の発掘を続ける現代パート。そして、その夢という形で語られる前漢時代の武将たちが登場するシリアスな歴史パートが交互に描かれていき、めくるめく運命と壮大なアクションが展開するという構成だ。 【次ページ】 違和感を感じた点とは？ AIジャッキーが醸し出す違和感 © 2024 Bona Entertainment Company Limited 歴史パートに出てくるジャッキーは、30才くらいに見える若い姿をしているのだが、これがなんとフルCGで創成されたバーチャル俳優。AIを駆使したという表情のモデリングなどは確かにリアルなのだが、実写で撮影された俳優に囲まれると、ひとりだけゲームのキャラクターが混ざり込んでいるようで不気味なことこの上ない。 違和感ありありの佇まいでシリアスな演技を披露するAIジャッキーに思わず吹き出しそうになったが、周囲の席の初日ジャッキー勢は息すら漏らさない。覚悟が違うというか、よく鍛えられている。 このAIジャッキーが演じる武将・趙戦（ちょうせん）が、謎の美女・夢雲（ぼううん）と巡り合い、部族同士の争い、王家のお家騒動、そして身分違いの悲恋など、王道の歴史ロマンが繰り広げられる。 この夢雲を演じるグーリーナーザーは、『ポリス・ストーリー/レジェンド』（2013）でもジャッキーと共演した女優で、その整った顔立ちはまさにCGレベル。それでもAIジャッキーに比べるとさすがに人間味があり、血の通った演技と華麗なアクションが身に沁みる。現代パートでもポン・シャオランという美人女優がアシスタント役をチャーミングに演じているが、この中華美女たちを眺めているだけで、ちょっと退屈な展開でも愉しめる。 【次ページ】 ジャッキー・チェンとテクノロジーの融合 ジャッキー・チェンとテクノロジーの融合 © 2024 Bona Entertainment Company Limited AIジャッキーには最後まで慣れなかったが、歴史パートはドラマティックに盛り上がり、クライマックスは現代パート。遺跡発掘の探検アドベンチャーを経てお宝に辿り着くと、ようやくジャッキー御大による小気味よいアクションが展開する。 スタントダブルを使おうが、早回しだろうが、やはり生身のジャッキーアクションはたまらない。現代のアクション界には、若くて身体能力のある俳優がたくさんいるが、この味はジャッキーにしか出せない。ジャッキー・チェンというアクション俳優が、唯一無二の無形文化財であることが改めて理解できる。 それだけにAIジャッキーという表現方法は、アリなのか。いつまでもスターを求めるファン、それに応えようとする制作陣。リアルとフェイク。テクノロジーの追求と功罪。俳優が俳優である意味…。映画の本筋とは別に、哲学的なテーマが浮かんでくる。 禁断のAIジャッキーは、かつてのキッズたちだけでなく、あらゆる映画ファンにとっての「踏み絵」だ。これが過渡期の産物なのか、単なる黒歴史となるのか。いまこそ映画館でその衝撃を体感しておくべきだろう。 （文・灸 怜太） 【次ページ】 映画『A LEGEND 伝説』予告編 【最初から読む】 映画『A LEGEND 伝説』考察＆評価レビュー。 【関連記事】 ・【写真】禁断の"ジャッキー若返り作戦”はアリ？ ナシ？映画『A LEGEND/伝説』劇中カット一覧 ・映画『ゴーストキラー』評価＆考察レビュー。髙石あかりの“役に憑依する力”の凄さとは？【ネタバレ】 ・日本映画史上最高のアクション俳優は…？ 驚異の身体能力を誇るアクター5選 【了】

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