「青山真治監督の言葉に今でも助けられている」注目の俳優・佐々木詩音が語る、今までとこれから。ロングインタビュー【前編】
2018年PFF(ぴあフィルムフェスティバル)でグランプリを受賞した『オーファンズ・ブルース』に出演後、2021年には同監督のPFFスカラシップ作品『裸足で鳴らしてみせろ』で主演を務めた、若手俳優の佐々木詩音さん。今回は佐々木さんにロングインタビューを敢行。前編では、俳優を志したきっかけや工藤梨穂監督と組んだ2本の映画について、たっぷり語っていただいた。(取材・文:福田桃奈)
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【佐々木詩音 プロフィール】
1995年生まれ、大阪府出身。京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)に入学後、2016年『DRILLANDMESSY』(吉川鮎太監督)ではPFFアワードでホリプロ・エンターテイメント賞受賞。2018年には卒業製作である『オーファンズ・ブルース』(工藤梨穂監督)でPFFグランプリを受賞。2021年PFFスカラシップ作品『裸足で鳴らしてみせろ』で主演を務め、第36回高崎映画祭にて最優秀新進俳優賞を受賞する。その後、『窓辺にて』(今泉力哉監督)や、『CHAIN』(福島芳穂監督)に出演するなど活躍を続ける。最新作に『凪の憂鬱』(磯部鉄平監督)が公開中。
「俳優は誰にだってできる」
俳優を志すきっかけとなった恩師の言葉
――― 工藤梨穂監督の映画『オーファンズ・ブルース』(2018)と『裸足で鳴らしてみせろ』(2021)を拝見して、佐々木さんのお芝居に衝撃を受けました。この度はお話を伺えて光栄です。まず俳優になろうと思ったきっかけについて教えてください。
「大学の進路を決める時に、今までの人生で続けてきたものは何だろうと考えました。僕は飽き性なのでどれも継続して来なかったのですが、その中でも子供の頃から欠かさず観ていたのが金曜ロードショーでした。それも、家族からご飯を食べるのが遅いと怒られるくらい没頭して観ていたのを思い出したんです。
それから映画学校について調べはじめて、当時はまだ名前が変わっていなかった京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の俳優科が気になり、オープンキャンパスに行きました。そこで出会ったのが、同校の講師であり、後に僕の恩師となる俳優の水上竜士さん。
オープンキャンパスで水上さんは、親身になって相談に乗ってくださいました。『この人に教わりたい』という思いが芽生え、同校への進学を決めました」
―――当時、水上さんから掛けられた言葉で印象に残っているものはありますか?
「水上さんは『俳優は誰にだってできる』と仰っていて、その言葉が自分の背中を押してくれました」
―――大学では、監督コースと俳優コースの交流は盛んだったのでしょうか?
「普通の学部と比べるとグループワークが多く、両コースの交流が頻繁にあり、主に“みんなで創る”という作業をやっていたので、それが今日の映画の現場でも活かされている気がします」
―――なるほど! 佐々木さんは元々、共同作業はお好きだったのでしょうか?
「あまり得意じゃなかったですね。どちらかというと引きこもりがちで、1人で何かやることの方が多かったです。
中学の時も一応運動部には所属していたのですが、あまり乗れなくて 。でも映画は不思議とやっていて楽しかった…。みんなで創っていく感覚がとても心地良いなと」
―――大学に入ったことがきっかけで全てが変わったのですね。最初の出演作は恐らく大学の実習作品だと推測するのですが、どのような作品でしたか?
「僕はAO入試で入ったんですけど、試験の内容が、短編作品をグループごとに撮影するというものだったんです。カメラの前で演技をする初めての経験でした。脚本は映画学科の先生か現役生が書いたのでしょうか、少し変わった作品でしたね。
当時はワケがわからずにやりましたが、楽しかった記憶があります」
―――初めてご自身のお芝居をスクリーンで観た時の印象はどうでしたか?
「無理だな、とても見れやしないなと思いました(笑)。今でも自分が出演した作品を観るのは得意じゃないんです。
普段の生活で、自分の声や動きを外から見る経験をしてこなかったので、初めて画面に映る自分の演技を観た時は、声にも動きにも違和感があって、『向いてないかも』と思いました」