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“正体がわからない”という攻めの設定

Netflix Original映画『終わらない週末』
Netflix Original映画終わらない週末Netflixにて独占配信中

まずこの作品は、単なる「終末系映画」ではない。そもそもテロやクーデターなどは重要なことではないのだ。

過度なデジタル化、政治、戦争、人種差別、人とのオフラインコミュニケーションの希薄化、自然の崩壊など、これらのあらゆるテーマを考えるための作品だ。

こんなに多くのテーマが内包されていると、メッセージが押しつけがましくなりがちだが、物語として整頓されている脚本力が素晴らしい。無理やり感がなく、あくまで一連の流れとして描かれる。原作小説とは若干ストーリーが変わっているようだが、この脚本力の高さには膝を打つ。

各テーマに対する描写に現代的なリアリティがあることがひとつの要点だろう。

例えば、「自動運転のテスラ車が制御不能となって暴走する」などは、現在の社会であれば本当に起こりそうな事故だ。だからこそあり得ない出来事であるのに信憑性が高まっていく。そこに”ヒリつく空気”が生まれる。2時間以上、ずっと手に汗を握りながら見られる作品だ。

終末系パニック映画は、いわずもがな人気のコンセプトだ。宇宙人、ゾンビ、幽霊、動物、サメ、殺人鬼などなど、古今東西の映画でそうしたモチーフが使われてきた。

今作では最後の最後まで、その正体が分からない。何らかのサイバー攻撃がその発端になっており、サブリミナル的に人工衛星が映される。「宇宙人の仕業か?」と思わせるが、結局、片鱗すら出てこない。

また、途中で鹿やフラミンゴの大群が登場する。特に「幸運の象徴」といわれる鹿は、草食動物なのに人間を襲う気満々。「自然・動物保護団体の反乱か?」とも想像するが、そんな描写はない。

最後にG・Hが「アメリカがクーデターで破壊される」ということを告白するので、これが真相のようだ。しかし誰が何のために、どんな手段でクーデターを起こすのか、いっさいは藪の中のまま話が終わる。

昨今「分かりやすい作品」がウケているなか、この余白をたっぷりとった「考えさせるエンド」を採用したNetflixは粋ではないだろうか。

今作のラストは賛否両論分かれると思う。

しかしエンドロールの最中にあれこれ妄想しながら、自分の哲学や思想と向き合う時間。これは映画の大きな魅力だ。真相は宇宙人でもいい、霊でも超能力者でもいい。この作品の肝は「見終わった後の余韻と考察の時間」にある。

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