『アンメット』の現場では“奇跡”が起こり続けた。最終回の秘話とは? Yuki Saito監督、ロングインタビュー【後編】
6月24日(月)に最終回を迎えた月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)。今回は、本作のチーフ演出を務めるYuki Saito監督にインタビューを敢行。後編では、ドラマの名シーンを振り返りながら杉咲花と若葉竜也の覚悟が伝わる撮影裏話など、お話をたっぷり伺った。(取材・文:あさかしき)
チーム全体のことを考える座長・杉咲花の存在感
―――インタビュー前編では、主演の杉咲花さんについて「凄さを目の当たりにし続けた」とおっしゃいましたが、そのあたりについて、もう少し詳しくお聞かせください。他媒体の取材でも既に明かされていましたが、劇中に登場するミヤビの日記は、杉咲さんの直筆だそうですね。
「そうです、杉咲さんが全部書いています。当初は、書いてもらうにしてもカメラに映るところだけで、映らない部分はスタッフが書く、というプランを考えていたのですが、彼女は全部書きたいと言ってくれました。最終話には三瓶がミヤビの日記を見るシーンがありましたけど、三瓶のお芝居を引き出すために、杉咲さんがカメラに映らない部分も含めて、書き直してくれたのです」
―――最終話のためだけに、日記を書き直したということですか?
「そうです。一度書くだけでもものすごく大変な作業なのに…。今回、杉咲さんは主演俳優として自分のお芝居をどう見せるのかは勿論、作品を良くするためにどうすればいいのか、全体のバランスを常に考えて現場に立ってくれていました。彼女と話していると、時おり、プロデューサーと話しているような感覚になります。彼女は、俳優側の視点で、俳優が伸び伸びと演技をするために、どういう撮影の仕方をすればいいのか、的確な意見をくれるんです。実際に、杉咲さんに相談して撮り方を決めたことが何度もありました」
―――杉咲さんのご意見を踏まえて撮られたシーンというのは、具体的にはどの場面でしょうか?
「特に度肝を抜かれたのは、第2話で登場するサッカー強豪校のエース・鎌田亮介のエピソードでした。亮介が病室で涙するシーンは、演じる島村龍乃介くんの一人芝居だったので、雰囲気を作るのが凄く難しかったんです。そのカットだけで40分くらいかけて、その日はなんとか撮影したのですが、帰り道で考え込んでしまったんです。左の感覚を失ってサッカー選手として再起できるかわからない、でも仲間が待っている。そうした絶望と焦りが涙を流させるわけですが、こういう急き立てるような撮り方で映した涙は、果たして本当にあのシーンにふさわしい、リアリティのある涙だったんだろうかって」