ざらつきのない透き通った声
石田ゆり子
―――続いては、女優としてだけでなく、ナレーターやエッセイストとしても活躍されている石田ゆり子さんです。
「石田さんは、呼吸のコントロールがとてもお上手ですよね。女性の場合、男性よりも筋肉が柔らかく、量も少ないので、加齢とともにお腹周りの呼吸補助筋や横隔膜の筋力が落ちやすいんです。すると、吐く息の量と声量のバランスが崩れて、声がうわずったり、ざらついたりしやすくなるんですね。
ただ、石田さんの場合、50代を超えても声のざらつきがまったくなく、リップノイズ(唇を動かしたときに入る雑音)も極端に少ない。なので、とても聞きやすいんです」
―――石田さんは、2021年に大橋トリオさんプロデュースで「lily」名義で歌手としても活動しています。しっかりボイストレーニングをされているのかもしれないですね。
「そうですね。長澤さん同様身体の使い方を熟知していて、これくらいの呼吸でこれくらいの声が出る、という調整が自然にできるんだと思います。
あと、石田さんの声は、ちょうど真ん中の帯域のメゾソプラノなので、周りの音に溶け込みやすい分邪魔にならない。私もこういう声が欲しかったなあ、と思いました(笑)」
―――ちなみに、呼吸をコントロールするには、どのようなトレーニングを行えばよいのでしょうか。
「私が運営している日本美声トレーニング協会では、『キャンドルブレス』と『ドッグブレス』という2つのトレーニングを推奨しています。『キャンドルブレス』は、誕生日ケーキのロウソクを吹き消す息のことですね。風船を膨らませる要領で8秒間、できるだけ1点に向かって息を吐き続けます。反対に、『ドッグブレス』は犬のように『ハッハッハッハッ』と短く息を吐くトレーニングです。これにより、横隔膜が鍛えられます。
あとは、メンタルを整えることも重要ですね。自律神経のバランスが崩れると、呼吸が浅くなって、酸素と二酸化炭素のバランスが崩れます。特にデスクワーカーは、吸った空気のうち、3割くらいしか吐けていないと言われています」
―――呼吸の乱れが声の乱れにつながるわけですね。
「その通りです。ちなみに、体調や身体のバイオリズムも、声に反映されます。歌番組で口パクがなくならないのは、こういった理由ですね」