フレッシュな役が似合う柔らかな声
浜辺美波
―――続いては、今回最年少の浜辺美波さんです。
「浜辺さんの声も長澤さん同様キーが高いんですが、キンキンしない高音という印象ですね。若い女優さんの声って、どちらかというと高くてキンキンした声の方が多いんです。ただ、彼女の声は、柔らかくて、比較的低音の声も出せる。ということで、今回選ばせていただきました」
―――浜辺さんと言うと、古風な顔立ちも相まって、『ゴジラ-1.0』(2023)や『らんまん』(2023、NHK総合)などの昭和を舞台とした作品が合う印象があります。
「正直、声の印象だけで言うと、あまりレトロな感じはしないですね。フレッシュな声質なので、どちらかというと清涼飲料水のCMや、少女マンガの主役が似合うイメージです。俳優で言うと、中川大志さんの声質に近くて、子音、特に『か・き・く・け・こ』の発音がしっかりしています。しっかりトレーニングを重ねている証拠ですね」
―――やはり日々の研鑽が重要なんですね。
「そうですね。特に若い方の場合は、皆さん当たり前のようにトレーニングを受けているので、サボった結果が顕著に出ます。ただ、ストイックに研鑽を積んでいる俳優さんが花開くかというと、必ずしもそうでないところが芸能の世界の残酷なところであり、面白いところでもありますね」
―――対照的に、特別にトレーニングを積んでいないのに、もともと声質が良いという方もいらっしゃるのでしょうか。
「私は今、音楽教育に関わっているんですが、一人、ずば抜けて歌が上手い生徒さんがいます。ただ、その子は、『うまく歌わなきゃ』とか、『みんなに褒められなきゃ』とか、そういった気持ちが一切なくて、『ただ歌いたいから歌うだけ』なんですね」
―――何も考えていないから、のびやかに歌えるんですね。
「そうなんです。ただ、芸能界を目指す生徒さんが、このような心持ちを維持できるかは、正直難しいと思います」