映画『フェラーリ』史実に基づいた事故シーンの衝撃とは…? アダム・ドライバーが主役に抜擢されたワケ。考察&評価レビュー
F1界の“帝王”と呼ばれた男、エンツォ・フェラーリの壮絶な生き様を描く伝記映画『フェラーリ』が公開中だ。主演を務めたアダム・ドライバーの演技、マイケル・マンの演出に着目したレビューをお届けする。(文・村松健太郎)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価レビュー>
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【著者プロフィール:村松健太郎】
脳梗塞と付き合いも15年目を越えた映画文筆屋。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ(株)に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ(株)に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在各種WEB媒体を中心に記事を執筆。
巨匠マイケル・マンによる9年ぶりの劇場公開映画
『ヒート』(1995)、『コラテラル』(2004)など、クライムサスペンスの傑作群で知られるマイケル・マン監督。アンセル・エルゴート、渡辺謙らが出演するドラマシリーズ『TOKYO VICE』(2022~)にかかり切りだったこともあってか、監督作品としては2015年の『ブラックハット』以来となった。
そんなマイケル・マンは、2019年公開の映画『フォードVSフェラーリ』(ジェームズ・マンゴールド監督)の製作総指揮に名を連ねている。同作で仇役として描かれていたのが、映画『フェラーリ』の主人公、エンツォ・フェラーリである。
1898年に生まれたエンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は第一次世界大戦に従軍してから、1920年代にレーシングドライバーとしてモータースポーツに関わるようになる。1929年にレーシングチーム“スクーデリア・フェラーリ”を設立。1930年代に入ると経営に専念することになる。
映画の舞台となるのは1950年代後半。フェラーリ社は業績不振の危機に瀕していた。また、エンツォと妻・ラウラ(ペネロペ・クルス)の関係は、息子を亡くしたことをきっかけに冷え切っている。その一方でエンツォは愛人を囲い、彼女との間には子供がいる。映画は彼の“二重生活”を説明を排したドライなタッチで描いていく。