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怖さ5割増し…モノクロ化で鮮明になった山崎貴の狙いとは? 映画『ゴジラ-1.0/C』徹底考察【映画と本のモンタージュ】

映画から受け取った感動を全く別の体験に繋げることで、人生はより豊かになる。本コラムではライターでブックレビュアーのすずきたけしさんが、話題の映画のレビューと作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げ、双方の魅力を引き出す。今回はモノクロ映像版となる『ゴジラ-1.0/C』を考察。(文・すずきたけし)

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【著者・すずきたけし プロフィール】

ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。

目指したのはモノクロ写真の名匠達が撮ったような画調

©2023 TOHO CO., LTD.
©2023 TOHO CO LTD

昨年に公開されヒットした『ゴジラ-1.0』の勢いは北米でも止まらず、現時点(2023年1月17日)での北米での興行収入は5000万ドル(約75億円)。2019年の『劇場版 「鬼滅の刃」無限列車編』の4960万ドル(約73億円)を抜き、邦画における北米での興行収入歴代2位となった(1位は1998年の『ポケットモンスターミュウツーの逆襲』で8574万ドル)※1。

『ゴジラ-1.0』の舞台は敗戦直後の日本。神木隆之介演じる主人公の敷島浩一は元特攻隊員。山崎貴監督自身が語るように、1954年版の『ゴジラ』に感じた“戦争の化身”のイメージを色濃く本作に投影した、近年のゴジラ作品の中で最もオリジナルに接近したテイストの作品なのが『ゴジラ-1.0』である。

そんな『ゴジラ-1.0』がモノクロバージョンの『ゴジラ-1.0/C』となってこの度公開された。1954年版の『ゴジラ』に思い入れのある山崎監督のコメントによると“カット単位で調整”し、“目指したのはモノクロ写真の名匠達が撮ったような画調”であるという。

さて、そんなモノクロバージョンの『ゴジラ-1.0/C』を観てみたが、通常公開版の『ゴジラ-1.0』では感じることがなかったことがいくつかあった。それはひとつの作品を複数回みることで気づく細かな設定の理解やスクリーンに散りばめられた小ネタということではなく、あきらかに映画の印象がガラリと変わったのである。

はっきり言えばこれから『ゴジラ-1.0』をみるならば、まずはモノクロバージョンからみることをおすすめしたいくらいなのだ。
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※1 BoxOfficeMojo.com by IMDbProより

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