観客を興奮させ続ける206分の魔法とは…? 映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』徹底考察&解説レビュー
text by 灸怜太
第76回カンヌ国際映画祭で初上映され、スタンディングオベーションで広く称賛された映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が公開中だ。石油により富を手にした先住民が被害者となった残酷な実話をもとに、巨匠・マーティン・スコセッシが「重い史実」を描く。(文・灸怜太)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
206分持続する緊張感
上映時間3時間26分。さすがに尻込みしてしまう。マーティン・スコセッシ監督の前作『アイリッシュマン』は3時間半あったが、Netflixで自宅鑑賞したのでそこまでプレッシャーはなかった。しかし、今回は映画館で206分…これは集中力が切れても仕方がないかと思ったが、杞憂だった。
最初から最後まで、じんわりとした不穏な空気が漂い続け、印象深い映像が心に焼き付き、愚かで生々しい人物たちの右往左往から目が離せなかった。
1920年代、アメリカのオクラホマ州で油田が発見され、そこで暮らしていた先住民のオセージ族に莫大な富をもたらす。その利権を狙った白人たちによる陰謀を描いたノンフィクションドラマである。
このツカミで出てくる、オセージ族の人々が吹き出す石油を浴びて踊る姿がもうカッコいい。後ろ暗い歴史ドラマのなかで映し出されるのはオクラホマの雄大な自然と、20年代の町並みや風俗、そしてイイ顔の住人たち。どのカットも、間違いのないアングルと安定した語り口で飽きさせない。